とはいえ、何に特化するべきか。イタリアンやフレンチはシェフの腕が必要、和食の割烹や寿司も熟練職人がいないと難しかった。
「それなら、とことん良い素材にこだわった勝負しようと決めました、そのために魚以外のメニューをそぎ落として、高級さと鮮度にこだわった魚を提供する、現在のスタイルに辿り着いたんです。特に“朝締めの魚”は築地に入った活魚をその日の内に提供しているので、食感が全然違いますよ。俺の魚を食ってみろ!!という奇抜な店名も魚の活きの良さをストレートに伝えられるようにと、何度も考え直しました」
自分たちの店の良さをお客に伝えたい。そんな熱い思いが、単なる総合居酒屋を鮮魚専門の業態へと軌道修正させた。ここから『俺の魚を食ってみろ!!」の挑戦が始まったのだ。
リピーターに愛される、注文率100%の看板メニュー
同店を語るうえで欠かせないのが、看板メニュー「俺の玉手箱」だ。本マグロ、ボタン海老やその時の旬な魚を重箱に盛りつけて1人前580円(注文は2人前から)で、原価率は100%を超える破格の値段設定だ。
「飲食店には、必ず目玉が必要だと思っています。お客様に、“これを食べなきゃ帰れない”と思ってもらえる事が重要なので、メインの魚次第では原価率が130%以上になってしまうこともあります。しかも注文率はほぼ100%です。単品のメニューとして見れば、完全に赤字商品ですよ。でも看板メニューですから“これがあるから店に来てくれる”ことが重要なんです。店としてはいくら赤字の商品があってもトータルで設定額に収まってさえいれば構いません。それよりも“これを食べたい”という強い来店動機を持ったファンが増えてくれる事が大切だと思いますね」
驚かされるのは、価格だけではない。「俺の玉手箱」は、刺身の盛り合わせのフタを開けると中からドライアイスの煙がモクモクと出てくる。器や盛り付けも演出のひとつなのだ。