最初は飲食経験を積むために、と考えて吉祥寺界隈の飲食店を片っ端から面接して回ったんですが、見事に不採用ばっかり(笑)。腹が立って「もう自分でやるわ!」って感じで、2002年にホルモン焼きの「わ」をオープンしました。
【Q】なぜホルモンだったのでしょうか?
本来、ホルモンもモツも同じものですが、僕の勝手なイメージで東京は“豚モツ”で、大阪は“牛ホルモン”だったんです。東京で食べるモツがどうしても好きになれなかったのと、当時まだ牛ホルモンが珍しかったので流行るんじゃないかと思って、牛ホルモンと焼酎の店にしようと決めました。
【Q】オープン後、売り上げで苦労するようなことは?
実は1回もありません。当時は焼酎ブームの走りで、飲食店で提供されている価格が暴騰していました。ロックグラスに入ったほんの数センチの黒霧島が1杯800円から1,000円でしたからね。だからうちはただ真っ当な値段で出すだけで、多くのお客様に喜ばれたんだと思います。
あとは、僕がお酒を飲むときにこうだったら嬉しいな、と思うこだわりを、微妙なさじ加減で入れていましたね。例えば、水割り用の水は鹿児島の蔵元から仕入れるとか、お湯割りならちゃんと黒じょか※を使おうとか。もちろん焼酎もたっぷりの量で、どの銘柄も1杯500円にするとか。それだけでも当時は、「よく500円でやってるな」とお客様に驚かれましたね。
※鹿児島にある注ぎ口の付いた酒器
【Q】お酒の仕入れには、酒屋時代の人脈を生かしたのでしょうか?
安く仕入れられるルートもあるのですが、それはもう初めから使わないと決めていました。私もお酒を売っていたので分るんですが、安売りが競争化すると酒店も辛いんです。ほんの少しの価格差で、「要らない」と言われたり、取引先を無くしたりする。そういう仕入れ方はやりたくないなと。
なので、「肉山」の生ビールに関しては“定価”で仕入れています。もちろん、店にとって仕入は安い方がいいのは当然ですけど、お客様にとっては仕入れ価格がいくらでも関係ないじゃないですか。いかに安く仕入れるかより、いかに美味しい状態でお酒を提供できるかが大切やと思うんです。
「お客様の財布の紐を店が握ったらアカン」
【Q】「売るための努力」は、具体的にはどのようなことをされていますか?
とにかく良いものを美味しくというだけですね。販促費も一切使ったことがないですし。その分、食材の品質は圧倒的に良いと思います。
例えば、「わ」や「たるたるホルモン」で提供しているホルモンはどれも一人前500円。と最初に決めてしまったので、たとえ原価が350円でも、仮に60円だとしても500円の価値があると思えば出しています。