バルが増えて、いずれいろんなお店が淘汰されていくだろうというのは読んでいましたし、その時点できちんとした店が出来ていれば生き残れる自信はありました。でも、読みよりも1年早くその事態になってしまったので、かなり苦戦を強いられました。
【Q】苦境はどのように乗り越えたのですか?
1年間かけて、徹底的にメニューの見直しを図りました。2014年は1店舗も出店していないのですが、1軒も出さないなんていう年はここ数年で初めてだったんです。でも、店を増やしている場合ではありませんでした。いま徹底的に見直さないと、自分が飽和の波に飲まれてしまうんじゃないかという危機感を覚えましたね。
【Q】メニューの見直しとは、具体的にどのようなことをされたのでしょう?
当時は新規出店ありきでオペレーションを重視し過ぎて、料理が簡素化してしまっていたんです。それに、客単価は上げずに客数を増やすという選択肢をとっていたので、回転率を上げるためにスピードメニューを増やしたり、席を時間制にしたり…。最初に掲げたコンセプトから、どんどんズレて行ってしまっていたわけです。
どこかで「低価格なのでお客様もある程度は許してくれるだろう」という意識になっていたんでしょうね。店舗も増えて、メディアでも取り上げられたりして、僕を含めたスタッフ全員が勘違いしていたんだと思います。
そこで、徹底的にメニューを見直して、客数を増やすことから、客単価を上げることへシフトしました。それも単なる値上げではなく、それまでになかった価格帯のメニューを用意して選択肢を増やしたり、値上げに見合う質の高い商品を提供してお客様に喜んでいただこう、と。
新メニューの開発については、最低でも毎月2回の試作をスタッフに義務付けました。これは「僕らは変わらないといけないんだよ」という意識改革の意味合いも大きかったですね。あとは、産直ルートの構築など、食材の仕入れも一新しました。
【Q】効果が出たのはいつ頃からでしょうか。
見直しに着手してから1年後くらいに、各店舗の売上が伸びてきました。今年に入ってようやくトンネルの出口みたいなものが見え始めたという感じです。