「うちの店の近くにも、全国展開をしているさぬきうどんチェーンの出店が相次ぎました。お店が出来て最初のひと月ほどはうちのお客様もそちらに流れるのですが、またひと月ほどするとなぜかお客様が戻ってくるんです。その理由を色々と考えてみた結果、恐らくお客様はうどんを食べに来ているのではないんじゃないかと（笑）。皆さん、セットを食べに来ているんですね。セットはごはんものがメインでうどんはサブという立ち位置ですが、それを求めて来られているということに気づいたわけです」 

ごく普通に考えれば、さぬきうどんブームが来ているのならメニューにさぬきうどんを加えるのだろうが、山田うどんはそうしなかったばかりか全く違う策を取った。

「セットのごはんものを食べながらうどんをすすっている時に、うどんにコシがありすぎると食べるのに疲れてしまうんですよね（笑）。日本全国に色んなうどんがあってもいいじゃないですか。うちのうどんはフニャフニャですが、それが皆さんに愛されているのだからそれでいいと。むしろ、うどんじゃなくてラーメンをやったほうが面白いのではないかということで、3年ほど前にラーメンをメニューに加えました」

また、ボリュームの多さもお客からの支持を得ている理由だという。

「一般的なうどん屋のセットメニューというと、うどんと丼どちらからがハーフサイズだと思います。ところがうちは、かき揚げ丼セットであればうどんも丼も1人前ずつ、つまり2人前をセット価格で提供しているのです。このボリュームと割安感が、ガッツリ食べたい男性のお客様に支持されている理由だと思います」

数々の著名人に愛される山田うどん

他の大手チェーンとの違いは、その愛され方にも表れている。

「ネット配信の番組で、ライターの北尾トロさんとコラムニストのえのきどいちろうさんが山田うどんの大ファンということが判明し、2012年に『愛の山田うどん 廻ってくれ、俺の頭上で!!』、さらに2014年には第二弾となる『みんなの山田うどん かかしの気持ちは目でわかる!』という本を出していただきました。

第二弾の『みんなの山田うどん かかしの気持ちは目でわかる!』では、直木賞作家の角田光代さんが山田うどんを題材にした短編小説を書いて下さったり、人気アイドルグループ『ももいろクローバーＺ』のマネージャー川上アキラさんが、山田うどんの名物メニュー『パンチ』を食べているメンバーの写真とともに原稿を寄稿して下さったりと、本当にありがたい限りです」

異常なほどの愛され方は、これだけで終わらない。

「ここ最近人気が出てきた実力派アーティスト『吉田山田』とは、名前つながりで対談したのをきっかけに、新メニューのコラボ展開やライブ会場での共同出店、ホームページのリンクなど、親しくさせていただいています。また、2014年8月には吉田山田ファン100人を集めたファンクラブイベントを山田うどん本社で行ない、『新メニュー試食会＋ミニライブ』といった普通の会社ではやらないような企画も行ないました」

自由な社風が生み出した“山田うどんらしさ”。「こだわり」という言葉がこれほどまでに似合わない飲食店も、今どき珍しいのではないか。これからも、独自路線で多くのファンを魅了していくことだろう。