実績を重ねた居酒屋業態からの独立と転身
きちりの創業から12年にわたって居酒屋業態に携わり、「飲食で上場会社を作る」という夢を叶えた田端さん。これまでの実績を活かし、独立後も同じ路線で進むのかと思いきや、真逆の業態に舵を切る。
「きちりでは、都心型、ビジネスマン型、OL型など、アルコール中心のさまざまな業態をやり、自分の中ではやり尽くした感がありました。だから、独立後はまったく新しい業態にチャレンジしたかったんです。そこで、思い切ってアルコールに頼らない業態にしようかと」
アルコールからの脱却。これはチャレンジ精神とは別に、リーマンショックや東日本大震災での経験も大きく影響しているという。
「当時の売り上げの落ち込み方は、予想をはるかに上回るものでした。それを経験した時に、アルコールをメインに据えて、3年で投資回収するというスタンダードなやり方は、持続的ではないし、自分には向いていないんじゃないかという思いもあったんです」
そして、田端さんが核に据えたのは、ミートソースという商材だった。今のところ、大阪ではミートソース専門店をうたっているお店はpotto以外にない。ミートソースにしたのは、なにか戦略があったのだろうか?
「まずは、さきほど申し上げたようにアルコールから離れたかったというのが1つ。そしてもう1つは、昔から食を通じて世界中の困っている人の役に立ちたいという強い思いがありまして。『TABLE FOR TWO』の代表の小暮真久さんの影響も受けました。それで、独立に際して、自分が今から60歳までの20年間で食を通じて何が出来るだろうかと考えたわけです」
そんな時、「地球上で最も食べられているのは“小麦”と“トマト”だ」という、サイゼリヤの正垣会長の言葉に触れる。
「確かに、小麦とトマトというのは世界中で馴染み深いし、実際に私達もよく食べます。好き嫌いもあまりない。そして、『そこにもう少しの満腹感と栄養価を加られないだろうか』と自問自答した結果、ミートソースという答に至りました。満足感があって栄養価も高くて、しかもヘルシーなpottoのミートソースで、人を幸せにしたいと思ったんです」
ただ、誰もが一度は口にしたことのあるものだけに、納得のいく味に仕上げるのは一筋縄ではいかなかった。
TABLE FOR TWO…社員食堂や飲食店などで、1食につき20円の寄付金がTABLE FOR TWO運営事務局を通じてウガンダ、ルワンダ、タンザニアなど開発途上国に送られる活動。