連続勤務の上限規制
現在の制度では、労働者に毎週1回の休日を与えることが原則だが、特例として4週4休による変形休日制が認められており、最大で48日間の連続勤務が可能となっている。
しかし報告書では、精神障害の労災認定基準では2週間の連続勤務が判断材料にあること、休日労働にも一定の制限をかけるべきと考えられていることなどを踏まえ、「13日を超える連続勤務をさせてはならない」という規定を作る方向で検討されている。
人手不足に悩む中小企業や小規模事業者では、特定の従業員に連続勤務が集中しているようなケースも多い。飲食店のような繁忙期などがはっきりしている事業では、最低でも隔週で休みを入れられる人員の確保やシフトの見直しなどが求められるだろう。
法定休日の特定を義務化
現行法では、法定休日がどの曜日かをあらかじめ特定する義務はない。例えば、週2日の休みがあったとして、どちらの休日が法定休日なのか所定休日なのかが不明確となっている。
労働基準関係法制研究会では、法定休日が労働者の健康確保のための休息であるとともに、私生活のリズムを保つものとされている。このことから「毎週日曜日は法定休日」などと、あらかじめ決めておくことを法律に規定するべきだと提言されているのだ。
3交代制の工場や飲食業のような職場では、土日も稼働していることが多く、週によって休日の曜日が変わることも少なくない。シフト管理のルール見直しや、突発的な休みに対して柔軟な対応を行える仕組みづくりが必要不可欠だ。
勤務間インターバル制度
勤務間インターバル制度は、1日の終業から翌日の始業に一定の時間を空けることを定める制度だ。日本では努力義務として導入されているものの、厚生労働省の資料では2024年の導入率が5.7%(前年6.0%)にとどまっており、十分に整備されていないケースが多い。
(参考:厚生労働省「令和6年就労条件総合調査 結果の概況」)
報告書では、「抜本的な導入促進と義務化を視野に入れ、法規制の強化について検討する必要がある」と述べている。具体的な方向性としては、以下の通りだ。
- 「勤務間インターバル時間として11時間を確保することを原則としつつ、実現が困難な職種に対しての適用除外や確保できなかった場合の代用措置を労使合意などで柔軟に決める」
- 「勤務インターバルは11時間より短い時間を基準として、柔軟な対応の範囲を絞る」
- 「規制の適用に経過措置を設け、段階的に施行していく」
インターバルが確保できなかった場合の代替措置については、単なる事後的な健康観察ではなく、代わりになる休暇などの「実質的な労働からの解放」を実施することが望ましいとの考えが示されている。
休日・夜間の業務連絡を制限(つながらない権利のガイドライン策定)
スマホやチャットツールの普及で、休日や深夜に会社から連絡が来ることが当たり前になっている職場も多いだろう。これが労働者のメンタルを悪化させる原因の一つとして問題視されている。
フランスなどの欧州では、職場からの連絡を受け取らない時間を作る「つながらない権利」を法制化しており、具体的な内容の設定や範囲を労使で協議することが義務付けられている。
日本においては明確な規定がないため、勤務時間外の連絡を許容できるものや拒否できるものの範囲など、社内ルールを労使で話し合うことが必要になる。そうした取り組みを促進することを目的としたガイドラインの策定が検討されている。
週44時間特例措置の廃止
商業や接客娯楽業、保健衛生業などの特定業種であり、常時10人未満の事業所では、法定労働時間を週44時間に拡大する特例措置が認められている。しかし厚生労働省の2024年の資料では、この特例措置を使っていない事業所が87.2%と多いのが現状だ。
(参考:厚生労働省「労働時間制度等に関するアンケート調査結果について」)
ただし、業務によって極端な労働時間の実態もあることを考慮しつつ、一律の撤廃ではなく実態に応じた制度の撤廃に向けて検討されている。特に飲食店などの小規模事業者の中には、該当するケースが全くないとはいえないので注意しておかなければならない。
副業・兼業者の割増賃金ルール見直し
従業員が複数の企業で働いている場合、自社と他社の労働時間を通算して割増賃金を支払うことになっている。これが「厚生労働省のガイドラインに基づき、契約の順に所定労働時間を通算し、所定外労働の発生順に割増賃金計算する」など複雑で管理しにくい。
企業としての負担が増えるため、このルールが副業禁止の要因になっていることも挙げられる。また、労働者の健康管理という観点からは、労働時間の通算管理は必要であることも伺えるため、現在はルールの見直しが検討されている。
具体的には、労働時間の通算管理は維持しつつ、割増賃金の支払いについては「一定の要件を満たせば通算しない」などの区別した制度設計が必要だと考えられている。
フレックスタイム制度の見直し(テレワーク等への適用)
テレワークは、仕事とプライベートを両立させた柔軟な働き方として浸透しつつあるが、一方で在宅ワークによる「いつでも仕事できる環境」が長時間労働となる要因として問題となっている側面もある。
また在宅勤務中に家事や育児等の労働以外の時間が混在するなど、細かい中抜けが発生することも考えられるだろう。しかし現行の制度では、特定の日だけ導入するといったフレックスタイム制の部分的な適用はできないため、実態に合わせた制度の見直しが検討されている。
部分的なフレックスタイム制を導入した場合、企業としては従業員の勤怠管理がより難しくなってしまう。在宅勤務中の監視体制や労働時間の集計方法の変更など、複雑になるほど計算ミスや漏れが発生しやすいからだ。管理体制の整備などの準備をしっかりと実施したうえで、慎重に導入を考えるべきである。
法改正への対応は職場環境の改善や見直しにもつながる
今回の法改正では、これまでの長時間労働や連続勤務などで形成されてきた労働体系から本格的に転換を図ることを示している。もちろん働き方や法律などは時代の流れと共に変化するため、今回で完結するものではなく今後も続いていく。こうした変化に対応するには、法改正をコスト増加のリスクとして捉える考え方を改めることが重要である。シフトの見直しや就業規則の整備を実施した先に、従業員の定着率向上や採用応募の増加といったメリットがあるからだ。
特に中小企業や小規模事業者は、そうした可能性を視野に入れて今から少しずつ取り組むことで、従業員が長く働き続けられる職場づくりにつながるだろう。
[出典]
労働基準関係法制研究会(厚生労働省)
新しい時代の働き方に関する研究会(厚生労働省)
上野大臣会見概要(厚生労働省)
令和6年就労条件総合調査 結果の概況(厚生労働省)
労働時間制度等に関するアンケート調査結果について(厚生労働省)










