—いま外食事業者に求められている体制はどのようなものでしょう。
メーカーや仕入先など、川上から流れてくる食材の素性を、これまで以上に明確にしておくことです。購入した食材データを記録し、消費者や第三者にいつでも説明できるような体制づくりが大切です。
具体的には、品質管理、コンプライアンス部門の社内的な位置づけをきちんとして、社内体制の強化することが求められます。実際には、品質表示部門の担当者が、表示責任者を兼ねている企業もあるようです。
—課徴金制度では、実際に事業者にはどの程度の『注意義務』が求められるのでしょうか。
昔からの付き合いで、その企業を信用していた”というようなレベルでは、“注意義務を怠っている”と判断をされかねません。データでも、ペーパーでもいいと思いますが、根拠となるデータを確保しておくこと。商品の詳細な仕様が書かれた“規格書”をきちんと活用することが求められます。規格書はいわば身分証明書です。身分証明書のないものには、相応のリスクが付きまとうと言えるでしょう。
—例えば、納入先が産地名を偽って納入したケースでは、注意義務を怠ったといえるのでしょうか。
納入先が、国産と言っていたので、届いた食材も国産だと“思っていた”という場合も、“注意義務を怠っている”と見なされる可能性があります。少なくとも、届いた食材の国産の表示、伝票上の記載を確認する必要がありますし、根拠となるデータを保管しておく必要があるのです。
—規格書による記録があり、納品時にチェックしていた場合も、措置命令を受ける可能性はあるのでしょうか。
規格書があって、納品の都度チェックもしていたケースでは、まず措置命令は受けないでしょう。なぜなら、納品した業者側の問題になるからです。さらにその場合は、景品表示法の対象ではなく、不正競争防止法などの法律の対象になり、納入業者への罰則は、もっと大きなものになると思います。
—それでも誤表示等の問題を起こしてしまった場合、企業はどのように対応すればいいでしょうか。
課徴金が課されるのは、優良誤認や有利誤認などの不当な表示です。単に誤表示をしたからといって、いきなり措置命令や課徴金の対象になるわけではありません。また、企業から消費者へ自主的な返金があった場合は、課徴金を減額する制度も導入されています。メニューの誤表示に気づいた外食事業者は、課徴金の処分を待たずとも、気づいた時点で消費者に返金などの対応を行うべきでしょう。
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2回に渡って、4月から実施される課徴金について解説してきた。仮に課徴金が減額・免除されたとしても、不当表示で事業者名が報道されてしまえば、企業として相当のダメージを受けることは、もはや避けようがない。やはり体制を整えること、そして食材の銘柄や産地などの裏づけを取り、表示の際は2重3重にチェックすること。さらに、データを保管して証拠を揃えておくことが、ますます求められることになりそうだ。
すでに「正しい表示」のために取り組みを行っている企業も多いと思うが、この機会に、あらためて社内体制や対策を見直してみてはいかがだろうか。
※最新の情報は景品表示法(消費者庁)をご覧ください。