増加する飲食店での食中毒 その背景は...
厚生労働省の発表によると、食中毒の年間発生件数はここ10年で下がっているが、飲食店での発生率が右肩上がりだ。2003年の30%から、2013年には59%とほぼ倍増。食中毒のほとんどは、飲食提供施設で起きている。
この現象は、飲食店の衛生環境が急激に悪くなったということではない。理由について、前田理事長は「医療検査技術の進歩で、食中毒菌の原因食材が短期間で具体的にわかるようになったため」と断言する。
「かつては腹痛で病院に駆け込んでも、胃腸炎と診断され、原因は曖昧にされがちでした。検査ができる病院が限られ、高額の検査費用・時間がかかったためです。技術の進歩はめざましく、例えばノロウイルスの検査時間は、この3年で3日間からたった6時間程度にまで短縮されました」
今後も検査技術が磨かれてゆき、より短時間で原因が特定されていくことになる。顧客の高齢化や、SNSなどの消費者の情報発信ツールの浸透などもあり、飲食店はこれまで以上に食中毒予防に厳しく取り組まなければならない。
現場の環境面と個人衛生面をチェック
前田理事長によると、飲食店は食中毒を起こさないため、現場の「環境面」と「個人衛生面」で注意すべきポイントがある。
(1)環境面「場の温度・湿度管理を機械に任せるという感覚を持つ」
季節問わず、環境が整いさえすれば食中毒菌は増殖し、食中毒事故を引き起こしてしまう。そのため、食材を保管している調理場や冷蔵庫の環境を、最適な状態に維持しなければならない。しかし、気温が上がるにつれて、人為的にその状態が損なわれてしまうケースがあるという。
「気持ちのいい気温になると、スタッフが『開けたほうが気持ちいいから』あるいは『節電になりそう』と、空調を止めて窓を開けたままにすることがあります。そうすると外から害虫やウイルス、菌等が入り込んでしまいますし、室内の気温と湿度のバランスが崩れ、菌が繁殖しやすい環境になってしまいます」
窓だけでなく、冷蔵庫や保存庫の開閉時間にも注意が必要だ。店舗で働くスタッフ全員に改めて知らせ、食中毒予防につなげたいところだ。