(2)衛生管理の競争原理を作る
「各店舗の衛生環境を形式知に置き換え、健全な競争原理を作ることです」
例えば、経営者や飲食店本部担当者が、定期的に各店舗の衛生検査をし、達成度をランキング化して開示するというものだ。3店舗以上あるような飲食店であれば、すぐに取り組めるという。
「近くに似た業態の店舗があり、そのお店のほうが良い点数をとっていたら、『来月は負けるものか』という競争意識が芽生えるでしょう。優秀な店長ほど、『チームのみんなで成果を分け合いたい』と考えますので、最優秀店舗には人数分の賞品を配るなどすると、さらに効果が期待できます。グラフ化するなどして、目に見えにくい衛生管理レベルを可視化しても良いです」
自社内店舗の検査担当者は衛生検査のプロである必要はなく、公平な検査ができる立場である事が重要だ。以下の箇所は、専門の知識を持っていなくても目で確認できるため、確認箇所の参考になりそうだ。
(1)トイレ (2)スタッフの身だしなみ (3)テーブルに設置している備品類の汚れ (4)床・テーブルの汚れ (5)照明器具のホコリ (6)エアコンのフィルター (7)厨房の壁面 (8)臭い(グラスや下水の臭気) (9)ガラス面の汚れ |
このほか、スタッフが細菌増殖を防ぐ動きができているかの項目も設けて、食中毒予防を徹底したい。下記事項は確認項目の一例だ。
(1)厨房の温度管理 (2)手洗い (3)冷蔵庫の開閉時間 (4)食材の出し入れ |
最後に、前田理事長は、スタッフの知識と意識のバランスを考慮してほしいと強調する。
「衛生管理は、『コストがかかる』と言う方が多くいらっしゃいます。確かにコストは発生するのですが、飲食企業の成長にとって、遅かれ早かれ必要な投資です。重要なのは、効率よく効果的に、何から取り組むべきかを最初に把握する事。そして現場のスタッフに、どのような環境がなぜダメなのか、といった知識をまず与えることが必要です。その上で、実行に移せるよう意識付けができる工夫をしてください。やる気を削ぐような発言は禁物。おもしろおかしくで良いのです。難しく考えず、スタッフみんなが楽しく実行できるようにすれば、衛生管理はうまくいくでしょう。私達はその活動を応援していきたいと考えています」
取材協力:NPO法人衛生検査推進協会