(2)個人衛生面 「手洗いの徹底や衛生手袋の使用」「体調不良スタッフの休養」
スタッフの清潔な着衣はもちろん、手洗いの徹底だ。通年、人間の手の中には、目に見えないさまざまな食中毒菌が存在する。手に汗をかくと汗の水分で雑菌が増殖してしまう。
「手が食材に直接触れないように、衛生手袋をつけるという方法もあります。最近は弁当など中食事業者でも手袋を利用されるようになりました。衛生手袋を選ぶ際は、青色をおすすめします。万が一包丁で手袋を切ってしまい、食べ物に混入したとしても、青色は食べ物にない色ですので、見つけやすいです」
食品取扱者が健康であることも絶対条件だ。ウイルスを保有している可能性があるスタッフを、食材があるところには入れてはいけない。
「ノロウイルスの症状は風邪と似ています。菌を持ち込んでしまったら、一瞬で清潔な環境が台無しになってしまいます」
そのためにも、スタッフが体調不良を申告しやすい環境を心がけたい。
経営者の一手間で店舗の衛生状況が向上
NPO法人衛生検査推進協会が1年間で衛生調査を実施し、作成するレポート数は約4,000。その中で、店舗の衛生状況が良好な店で経営状況が悪い店舗はなかったという。「衛生と利益は直結している」と前田理事長は力を込めた。
「衛生管理がしっかりしている飲食店は、利益をしっかりと創出できる管理体制が整っているのです。衛生管理ができているということは、店長がスタッフの細かい動きを管理できているといえます。きちんと清掃するスタッフは、調理の場でも指示に沿っているため、結果的に原価率が守られ、計画通りの利益が確保されます」
また、店舗衛生に気を配れるスタッフの意識は、高い顧客満足度につながっていると言えそうだ。「店舗の衛生管理はお客さんからは見えづらい場所です。お客さんの見えないところに気付かないスタッフが、言葉を発しないお客さんの気持ちに気付けるでしょうか」
食中毒予防にも利益にも関係しているならば、経営者としてはすぐにでも衛生管理に注目したい。店舗の衛生環境を向上させるために、経営者や飲食店本部は以下の2つができそうだ。
(1)動きのマニュアル化
「店舗の衛生環境の善し悪しは、スタッフが食中毒菌の種類を知っているかではなく、どんな動きをするかで決まります。とくに今は外国人のスタッフが増えているので、より動きをシンプルにわかりやすく伝えることが大事です」
経営者側が衛生管理の明確なマニュアルを提供することで、店舗スタッフの衛生管理へのストレスを和らげ、接客やサービスに意識を集中させることもできる。日本語に不自由な外国人スタッフでもわかる衛生管理という観点から、一度作業マニュアルを見直してはどうだろうか。