飲食店がファミリー層を取り込むための、テイクアウト版アレルギー対応法

食物アレルギー2020.08.03

飲食店がファミリー層を取り込むための、テイクアウト版アレルギー対応法

2020.08.03

飲食店がファミリー層を取り込むための、テイクアウト版アレルギー対応法

  • bnr_menu-plus_300(汎用)
  • bnr_v-manage_300.png 汎用

コロナ禍でテイクアウトやデリバリーに取り組む飲食店も増える中、家族に食物アレルギー患者がいる家庭のテイクアウト利用率は5割以下という調査結果がある。理由は原材料表示の欠如や従業員の知識不足による不安や不満感だという。

近年、患者数が増加しているという食物アレルギーだが、外食・中食事業者には原材料の表示義務はなく、統一的なガイドラインもない。しかし、アレルギー対策に取り組めば、ファミリー層の中でこれまで取り込めなかった新たな顧客の獲得やリスクヘッジにつながる可能性がある。実際にどのような対応が有効なのかを見てみよう。

目次

テイクアウト需要で明らかになったアレルギー対応の課題

2015年12月に施行されたアレルギー疾患対策基本法や食物アレルギー患者の増加を受け、メニューに特定原材料等の情報をピクトグラムなどで表示する飲食店も増えてきた。だが、新型コロナウイルスの影響を受けて急遽はじめたテイクアウトやデリバリーで、アレルギー対応をしている飲食店は多くないのが現状のようだ。

家族にアレルギーがある家庭で、コロナ禍にテイクアウトを利用したのは、約44%にとどまるという調査結果がある。また、利用した人の中で「不満が残った」「テイクアウトを利用したかったが、できなかった」という声も多数を占めたことがわかった。

この調査は、飲食店やホテルのアレルギー対応支援などを積極に行っているNPO法人アレルギーっこパパの会と、アレルギーなどの食の制限情報を飲食店や仲間に共有するWEBサービスを提供している株式会社CAN EATが共同で行ったアンケートによる。

CAN EATの代表取締役、田ヶ原絵里氏は指摘する。

「アレルギーのレベルは人それぞれ違います。今回のアンケートに回答いただいた、アレルギーがあるご家庭の6割は、外食の際に原材料を確認できる店舗を選ぶが、専用調理器具はなくても気にしないと答えています」(田ヶ原氏)

専用調理器具が必要なほど微量のアレルゲンでも発症する可能性がある場合、もともとテイクアウトを利用したいと考えていない傾向がある。だが、アンケートでわかったのは、専用調理器具を必要としないと答えた人の約3割が「テイクアウトを利用したかったのにできなかった」という結果だ。その理由には、以下のような声があげられたという。

・ネット上の画像からでは食材の確認がしづらく注文をためらってしまった。
・普段なら確認するが、コロナ禍で会話も控えたほうがいいだろうし、忙しそうなので遠慮してしまった。
・お店の人に聞いてもはっきりとした答えがなく、自信なさげで不安を感じた。

 「アレルギーがあると、普段から利用していて安心だとわかっている店か、原材料表示をしているチェーン店しか選択肢がありません。しかし多くの方が、チェーン店ではないお店のレパートリーを探しています。

しっかりしたアレルギー対応だけでなく、アレルギーがあるお客様が食事を楽しめるように、食べられるメニューへのちょっとしたオススメの一言だけでも喜んでいただけて、クチコミ評価も大きくあがる傾向があります」(田ヶ原氏)

特に、ファミリー層が多い立地のテイクアウトは、原材料表示をしてアレルギーに配慮するだけでも売上を大きく伸ばせる可能性があるという。

「テイクアウトは、家族みんなで同じものを食べたいという需要があります。安心して食べられるなら、一度に家族全員分、3~5人分の客単価が獲得できるでしょう。また、テイクアウトをきっかけに、『みんなで行けるお店』として通常の来店でもリピーターになる可能性もあるのです。

メニューに使用した原材料の一覧表の作成や、パッケージの原材料欄の撮影といった、取り組みやすい方法からアレルギー対応をはじめてみてはいかがでしょうか」(田ヶ原氏)

様々なアレルギー対応方法

消費者庁で行われた検討会や業界団体が作成する手引書などでも、飲食店にはアレルゲンの適切な表示や情報提供の取り組みをするよう求められている。ただ、食品メーカー等のように食品表示法に基づいた義務があるわけではなく自主的な取り組みとされている。アレルギーっこパパの会の理事長、今村慎太郎氏は訴える。

「食物アレルギーがあっても98%の人は外食を経験しています。飲食店での原材料表示の充実は、当事者のせつなる願いです」

では実際、どのようにアレルギーに対応すればよいのだろうか。今村氏は、以下の3点をポイントとして挙げる。店舗のリスク方針によって対応方法を選ぶとよいだろう。

■コミュニケーション

対応方法
・アレルギーを事業者側からヒアリング
・客からの申告によりヒアリング

■情報提供

対応方法

・メニューへのアレルゲン表示
・Webサイトへのアレルゲン表示
・公開はせず、問い合わせで情報提供

■調理

 対応方法
・メニューの食材変更はしない
・一部食材変更はする
・アレルゲンに合わせて個別対応する

「飲食を提供している限り、リスクはゼロにはなりません。双方の合意にもとづいて料理を提供することで少しでもリスクを下げるためにコミュニケーションは欠かせません。食べるかどうかの判断はアレルギーの当事者にしかできません。その判断をするためには、何が使われているのかという、原材料の情報提供が必要です。原材料だけでなく調理環境の情報を求められる場合もあるでしょう」

多くの事例を見てきた今村氏は、客と店だけでなく、従業員同士のコミュニケーションも重要だという。

「たとえば、落花生はナッツ類ではないといった、食物アレルギー特有の知識と経験が必要な場合があります。調理で一部食材を変更したり、個別対応したりする場合は現場の確実な情報共有が必要です。

アレルギー対応は間違えたではすまされない場合がありますが、人は間違えるものです。だからこそ、現場の確実な情報共有や従業員同士のコミュニケーションが重要になります。」(今村氏)

細かな原材料や調理工程の把握を確実にするには、システムを使ったアレルゲンの情報整備が有効だ。原材料のアレルギー情報や調理工程が一元管理できるサービス、アレルゲン表作成代行サービスなどの利用も選択肢として考えられる。

アレルギー対策の目的は、何よりもアレルギーの人が原因食品を口にしてしまい引き起こされるリスクを予防することにある。対策に取り組むことで、これまで外食をあきらめていた人に食の選択肢を増やし、新たな集客につなげることもできる。withコロナといわれるこれからの時代、外食文化を守っていくためにも多くの人が安心して食事を楽しめる環境整備はよりいっそう求められていくだろう。


BtoBプラットフォーム規格書
 

■NPO法人アレルギーっこパパの会 理事長 今村慎太郎
長女の食物アレルギーをきっかけに、2013年にNPO法人アレルギーっこパパの会を設立し、理事長に就任。「食物アレルギーがある人の安心できる外食は、料理を提供する人の安全からはじまる」を信念に、外食事業者に向けた講演、日本マクドナルドのアレルゲン検索システム構築の際のアドバイス、森永製菓、第一屋製パンとの新規事業立ち上げ、障害者就労支援施設でのアレルギー対応食品製造、100名規模の参加者全員のアレルゲンに対応した外食イベントの開催、約5年間に渡る『HOTERES(週刊ホテルレストラン)』でのコラム連載などを行う傍ら、週に数日、飲食店の現場に入り料理の提供も行っている。
公式サイト:https://www.arepapa.jp/ 

■株式会社CAN EAT 代表取締役 田ヶ原絵里
株式会社CAN EAT代表取締役CEO、アレルギー対応食アドバイザー。マクドナルドや伊勢丹などの飲食店でのアルバイト経験を経て、新卒で大日本印刷株式会社に入社。新規事業企画実行部署に所属し、7年間で4つのサービス立ち上げに携わり、OCR家計簿アプリ「レシーピ!」を250万DL規模のアプリに成長させる。母が米アレルギーになったことをきっかけに、「食事制限がある世界31億人の外食を救う」をテーマとしたサービスCAN EATを起業。ホテルやブライダル関係のアレルギー対応講師をつとめる。 
公式サイト:https://caneat.jp 

注目のキーワード

すべてのキーワード

業界

トピックス

地域