飲食店アレルギー対応の今 ~自主的に変化してきた外食産業

食物アレルギー2020.09.01

飲食店アレルギー対応の今 ~自主的に変化してきた外食産業

2020.09.01

飲食店アレルギー対応の今 ~自主的に変化してきた外食産業

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このたび、「外食企業のアレルギー対応・対策」をテーマに連載開始します、今村慎太郎です。2013年にNPO法人アレルギーっこパパの会を立ち上げ、以来、外食企業のアレルギー対応支援を中心に活動してきました。これまでに得た知見や経験、変化した社会の状況などをお伝えしていきたいと考えています。どうぞよろしくお願いいたします。

目次

5%のアレルギー対応で、社会的責任は果たせる

連載を開始するにあたって、まず私の外食企業のアレルギー対応・対策の根本にある考え方、スタンスについてお伝えします。

私は、アレルギー対応やアレルゲン表示がすべての外食企業、すべての店舗で行われる必要はないと考えています。食物アレルギーがある人は全年齢の1~2%(私の実感値では多くて5%程度)と言われています。

つまり、食物アレルギーがある人が外食に制限のない人たちと同じ選択肢がある状態を目指すとすると、飲食店の5%程度がしっかり対応できれば店舗数としては満たされると想像しています。複数店舗を展開している企業の場合は、5%の店舗でしっかりアレルギー対応ができれば、社会的責任は果たされるのではないかと考えています。

また、「対応しないこと」もアレルギー対応のひとつだと考えています。食べられるお店が増えて欲しいと願う当事者が多いのは事実ですが、千差万別かつ個人差が大きい食物アレルギーへの対応は、技術も知識も必要です。現在でも、勘違いや見落としなど、当事者にとって安易に思えてしまう対応での事故が後を絶ちません。

良かれと思ってやったことが裏目にでるのがアレルギー対応でもあります。やはり、今はまだ発症しない・させないことが重要だと考える段階ではないかと思うのです。お断りするのは、特に現場の方々にとっては難しい対応だとは重々承知しています。しかし、発症させないためにも、対応しないのも対応のひとつであると考えていただけると幸いです。

制度化されたルールはないが、自主的に変化する外食企業

近年、アレルギー疾患対策基本法や食品表示法、学校給食のガイドラインなどにより、具体的な制度やルールが作られ全国で運用されるようになっています。

食物アレルギーは個人差が大きく千差万別であるため、当事者個々で見た場合には、良くなったところも後退したところもあります。ただ、総じて、食物アレルギーがきっかけで生まれる課題が、個人の課題から社会の課題として認識されるようになったといえるでしょう。社会全体でこの課題の解決に向けた流れが作られているのだと実感できます。

外食においては他の領域に比べて遅れをとっていることは否めません。しかし、業界団体により手引書が作成され、アレルゲンの情報提供は一般的になりつつあります。食物アレルギーがあることを言いやすい社会になったことや、食物アレルギーがある人が増えていることも要因にあるのかもしれませんが、活動を始めた頃を思い返してみても、ずいぶん取り組む企業が増えました。外食企業にとっても食物アレルギーがある人への対応は不可避だとようやく認識されるようになったのでしょう。

アレルギー対応は、対応する側、対応される側の双方ともリスクがゼロになることはありません。だからこそ、安心して当事者やその家族が外食するためには、料理を提供する人たちの安全が大切です。この連載を通して、外食企業と当事者の距離が縮まり、少しでもアレルギー対応するにあたっての安全が作られることを願っています。

外食のアレルギー対応はまだ進化できる

最後に、今回は第一回ということで自己紹介的に、私が食物アレルギーの活動を始めたきっかけと、NPO法人アレルギーっこパパの会についてご紹介いたします。

今から遡ること10年前、生後半年の娘は血液検査の結果、食物アレルギーであると判明しました。「うちでは手に負えないレベルだ。紹介する病院にすぐに行ってください」今でも、医師から告げられた言葉と当時の光景が脳裏に焼き付いています。

娘はそれまで、体調を何度も崩し下痢が続いていて、薬を処方されても回復は一時的だったので、かかりつけの医師からの提案で検査を受けたのです。結果、娘は卵、乳、小麦、大豆の食物アレルギーと診断されました。この日から娘の食物アレルギーとの生活が始まりました。

アレルゲンを食べると苦しくなったり、時には命を落とすこともあったりするという、発症した時の大変さは何となく知っていました。しかし、むしろ辛さがあるのは、大変な状況が起きていない、いわば何の変哲もない日常の方だったのです。

ちょっとした外出であっても食事に困り、旅行に至っては覚悟と工夫で何とか乗り越えなければなりません。当事者になってはじめて、普通の家族なら当たり前にできることができないということを経験し、外で食事ができることのありがたさを感じたものです。

そんな生活を送るうち、娘の食物アレルギーをきっかけに抱いた疎外感や社会への怒りのようなものは、徐々に変化していきました。アレルギー対応ができる飲食店とできない(と思われる)飲食店の違いに興味がわいてきたのです。そこで1993年に勤務先を退職してNPO法人アレルギーっこパパの会を設立、外食企業へのアレルギー対応・対策のアドバイスといった活動をはじめました。

近年では食品企業と共に外食現場の方々にとって使いやすいアレルギー対応食品開発をするなど、活動の幅が広がっています。また、障害者就労支援施設でのアレルギー対応食品製造のアドバイス、食物アレルギーの子どもたちを100名規模全国から集め、全員の全アレルゲンに対応した外食イベントなども開催するようになりました。

これらの活動から、外食のアレルギー対応はまだまだ進化できるし、一般的に認識されているよりもアレルギー対応は難しくないかもしれないと感じています。

今後は、当事者の生活に関すること、外食のアレルギー対応に役立つ情報(アレルギー対策・対応方法、コンタミネーション、コミュニケーションなど)」をお伝えしていこうと思っています。どうぞよろしくお願いいたします。


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