<アレルギー対応の準備>従業員とアレルギー情報の共有を
前回のコラムでも触れた通り、外食企業のアレルギー対応として、アレルゲン表示や低アレルゲンメニューの用意、個別の調理対応といったものがあります。このどれを行うにせよ、まずは自社で扱う食材の原材料情報を把握する必要があります。
しかし、ここでひとつ気を付けておきたいのが、本部の品質管理部門内ではアレルギー情報はお客様への情報開示のために整理しているという意識が高く、実際にお客様と接する現場の店舗スタッフには共有できていないことが多いということです。食物アレルギーの人へ情報提供する前に、まずは食物アレルギーの人と接する店舗スタッフに向けて見える化をすれば、より確実な対応につながります。
では、店舗スタッフは実際にどのような情報を把握したほうがいいのでしょうか。店舗では、お客様から「卵アレルギーで、加熱した卵なら食べられます。このメニューの卵は加熱されていますか?」「このランチセットの小麦は、どのお皿の料理に使用されていますか?」といった、食材の状態やアレルギー成分が何に含まれているか、などの質問が寄せられます。店舗スタッフがそれらに応えられるよう、メニューのアレルギー成分が使用されているパーツ、量、状態を把握できる従業員向けのツールを作ることをおすすめします。
<店舗スタッフの対応>アレルギー表示制度を知ろう
また店舗スタッフは、アレルギーの対応をするにあたり、加工食品製造・販売におけるアレルギー表示制度で定められたアレルギー27品目を把握する必要があります。外食産業はこの制度の対象外ですが、アレルギーの人は、日々この制度の表示を頼りに生活しています。メーカーさんや食品卸さんからの情報もこの表示制度を基に情報が流通するため、アレルギー対策に関わる人は必ず押さえて頂きたい知識です。
表示が義務付けられている特定原材料 | 卵、乳、小麦、そば、落花生、えび、かに |
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特定原材料に準ずるもの | あわび、いか、いくら、オレンジ、カシューナッツ、キウイフルーツ、牛肉、くるみ、ごま、さけ、さば、大豆、鶏肉、バナナ、豚肉、まつたけ、もも、やまいも、りんご、ゼラチン |
また、食物アレルギーはこの表示27品目に定められた食品以外のものも原因食品となることも覚えておきましょう。
<アレルギー表示方法1>アレルゲン一覧表をどう使う?
外食産業では昨今、自主的な取り組みとして、WEBサイトでアレルゲン一覧表を公開している企業が徐々に増えてきました。
しかし、アレルゲン一覧表の捉え方には、情報提供する企業と情報を入手する食物アレルギーの人で大きな違いがあるように感じます。アレルゲン一覧表を公開している企業の方と接していると、100%の安全が保証できないがゆえに、製造ラインでのコンタミネーション(異物混入)の可能性といったリスク情報を細かに記載し、情報更新が企業の負担になっているケースがあります。一方アレルギーの人は、アレルゲン一覧表を貴重な情報源として活用していますが、アレルゲン一覧表でまかないきれない情報は、店頭でスタッフに尋ねて補おうと考えています。
そのため、企業はアレルゲン一覧表を公開する際、あくまで店舗スタッフと食物アレルギーの人とのコミュニケーションを円滑にする道具としてとらえて作成することをおすすめします。
<アレルギー表示方法2>お客様へのアレルギー情報の伝え方
最後に、アレルギーの人にアレルギー情報を届ける方法についてお伝えします。せっかくお客さん向けに整理したアレルギー情報は、食物アレルギーの人に届けなければ意味がありません。ウェブサイトのわかりやすい場所にアレルギー情報のページへのリンクを載せる、店頭のわかりやすい場所やメニューブックにアレルギー成分を示す、ということを念頭に、自社のウェブサイトや店舗にあったアレルギー表示の方法を模索してください。
また、当NPO法人で行ったアレルギーの人のアレルギー情報確認状況調査では、はじめて来店するお店では9割が事前にアレルギー情報を確認する一方、頻繁に利用するお店では2割未満と、飲食店の利用頻度に伴い原材料情報の確認頻度が大きく異なることが分かりました。そのため「前行った時にアレルギーが発症しなかったから安心して再度利用したが、今回発症してしまった」というケースをよく聞きます。これを防ぐためにも、原材料を変更した際は変更を知らせるマークをメニューに載せるなどして、リピーターのお客様にも食物アレルギーの情報を届けることを意識し、工夫してみてください。