外国人観光客の受け入れを再開する背景
新型コロナウイルスの影響を踏まえ、日本政府は2020年から原則として全ての国・地域からの新規入国を一時停止していた。この政策により日本に入国できるのは、ビジネス上必要な人材など「特段の事情」がある場合のみに限られていた。
しかし2022年5月26日の発表によれば、2022年6月10日以降、下記3つの新規入国を申請する外国人については、所定の申請を完了した場合、「特段の事情」があるものとして新規入国が原則として認められる。
・商用や就労を目的とした3か月以下の短期間の滞在
・観光目的の短期間の滞在
・長期間の滞在を目的とした入国
[参照]「水際対策強化に係る新たな措置」
政府は外国人観光客の受け入れ再開することについて、観光庁で実施している実証事業の推移が順調であることや、旅行業・宿泊業に従事する人たちが留意すべき点を取りまとめたガイドラインを速やかに公表できる目途が立ったことで、「添乗員付きのパッケージツアーで観光客の受け入れを再開する」と説明した。その上で今後の水際対策について段階的に平時と同様の受け入れを目指し、新型コロナの国内外の感染状況や主要国の水際対策の状況などを踏まえながら適切に判断していく方向だ。
また、すでに2022年6月1日からは1日あたりの入国者制限を1万人から2万人に緩和している。政府としては冷え込みが続く日本経済の活性化をはかり、正常化に向けた一歩を踏み出したい考えもある。
外国人観光客受け入れの条件
外国人観光客受け入れ再開にはいくつかの条件が設けられている。まず、入国制限緩和の対象となるのは「新型コロナウイルスの陽性リスクが最も低いとされている、アメリカや中国、韓国などを含めた計98の国と地域」に限られる。
これらの国と地域からの入国者については、ワクチン接種の履歴がなくても自宅待機や入国時の検査が免除されるとしている。ただし、98の国と地域に含まれていないインドやベトナムなど99の国と地域も、3回のワクチン接種履歴があれば自宅待機や入国時検査がなくても入国可能となっている。
赤区分:4か国 黄区分:99か国 青区分:98か国
区分 | 有効なワクチン 接種証明書の有無 | 入国時検査 | 入国後の待機期間 |
赤 | 無 | 実施 | 「3日間検疫施設待機(+施設検査陰性)」 |
有 | 「3日間自宅等待機+自主検査陰性」 (検査を受けない場合は7日間待機) | ||
黄 | 無 | ||
有 | - | 「待機無し」 | |
青 | 無 | ||
有 |
(引用元)「水際対策強化に係る新たな措置(29)」等のQ&A(5月 26 日時点)
さらに、感染拡大防止の観点から、観光客の入国制限を緩和するのは当面「添乗員付きのツアー客」に限定される点も押さえておきたい。新規入国者の取り扱いについて下記のように記されている。
6月10日から、日本国内に所在する旅行代理店等の受入責任者が、入国者健康確認システム(ERFS)における所定の申請を完了した場合、「特段の事情」があるものとして、観光目的の短期間の滞在の外国人の新規入国を原則として認めることとします。 |
つまり今回の入国制限緩和では、あらかじめ旅行代理店等の受入責任者が入国者健康管理システムで、所定の申請を行う必要があるということだ。外国人観光客が、個人で交通手段を手配して宿泊予約を行うかたちでの観光による入国は認められない。
飲食店・宿泊事業者は、ツアーを利用した観光客のみに限定されることを念頭に受け入れ再開の準備を進める必要がある。
外国人観光客受け入れ再開に向けて飲食店・宿泊業が対応すべきこと
外国人観光客受け入れ再開によって、飲食店や宿泊業は需要の増加が期待される。政府は外国人観光客の受け入れ再開と入国者数の上限引き上げに当たり、観光客にマスク着用を徹底するように要請する考えを公表している。
外国人観光客が訪れることが想定される飲食店や宿泊業の事業者は、マスク着用ルールを周知するために外国語でルール表記を掲載したり、口頭で説明したりできるように準備を整えておくことも重要だ。
飲食店や宿泊事業を営業する上で、政府がまとめた「外国人観光客の受入れ対応に関するガイドライン」の内容を参考にするといいだろう。
外国人観光客の入国制限緩和によってインバウンド需要が高まり、飲食店や宿泊業にとっては事業活性化のチャンスにつながるだろう。受け入れ再開とともにスムーズに外国人観光客を迎えるためには準備を入念に行い、現場のオペレーションに混乱が起こりにくい体制を整え、適切に対応していきたい。
<参考>