なぜ飲食店に時短要請? 再度の緊急事態宣言となった経緯
2021年1月4日、菅内閣総理大臣が年頭の記者会見で緊急事態宣言の検討を表明。その中で、「経路不明の感染原因の多くは飲食によるものと専門家が指摘している」とし、飲食でのリスクを抑えるため、消費者には夜の会合を控えるよう呼びかけ、飲食店には営業時間短縮への協力を求めた。
また、緊急事態宣言の実効性を高めるために「給付金と罰則をセットにした」特措法(新型インフルエンザ等対策特別措置法)の改正方針を示している。今回の緊急事態宣言でとりわけ飲食店に関係するポイントは以下のとおりだ。
緊急事態宣言の要請内容
期間と対象地域 | 2月7日(日)まで | 栃木県 |
---|---|---|
2月28日(日)まで | 大阪府、兵庫県、京都府、愛知県、岐阜県、福岡県 | |
3月21日(日)まで | 東京都、神奈川県、埼玉県、千葉県 | |
飲食店等への要請内容 | 営業時間:午後8時まで 酒類提供:午前11時~午後7時まで ※ホテル・旅館の集会等使用部分、喫茶店、バー、カラオケボックス、映画館、ライブハウスなど遊興施設含む ※デリバリー、テイクアウトは対象外 | |
補償 | 要請に応じた事業者には、店舗ごとに1日あたり協力金上限6万円を支給 | |
罰則 | 正当な理由なく要請に応じない事業者に対し、都道府県の知事は命令、立ち入り検査できる。 命令に応じない場合は以下の過料を科す。(2月13日施行) ・緊急事態宣言が出されている地域の場合、30万円以下の過料 ・まん延防止等重点措置の地域の場合、20万円以下の過料 ・立ち入り検査を拒否した場合、20万円以下の過料 |
首都圏1都3県は3月21日まで期限を再延長
3月5日、政府は東京都、神奈川県、埼玉県千葉県の緊急事態宣言期間を3月21日まで延長すると発表した。この背景には、2月中旬以降に全国の新規感染者数、入院者数、重症者数、死亡者数、療養者数の減少スピードが鈍化して下げ止まる可能性があり、再拡大(リバウンド)の懸念が残っているためとした。
そのほか、60歳以上の新規感染者数の割合が3割を超えており、重症者数の減少は時間を要すること、特に首都圏においては医療提供体制への影響が解消されてないこと、国内でも変異株の感染が継続して確認されており、感染者とクラスター報告数が増加傾向であることも挙げている。
対象地域の飲食店は時短営業。デリバリー、テイクアウトは対象外
緊急事態宣言の期間中、対象となる地域の住民には午後8時以降は不要不急の外出自粛を徹底するよう呼びかけられた。居酒屋や喫茶店などの飲食店とバーやカラオケボックスなどは午後8時までの時短営業が求められた。
ただし、デリバリーやテイクアウトは対象外だ。1月7日午前中に開かれた感染症の専門家らによる諮問委員会で西村経済再生相は、「自宅におられる方も活用していただければ」と述べている。
要請に応じた店舗には1日最大6万円の協力金を支給
今回の緊急事態宣言で営業や施設使用の制限対象となるのは飲食店が中心だ。これは、経済への影響を最小限に抑えるための限定的、かつ集中的な措置と説明された。
また、時短要請に応じた事業者には、店舗ごとに支給する協力金の上限をこれまでの1日あたり4万円から6万円に引き上げることも示された。各自治体で補償内容にばらつきが出ないよう、その8割を国の交付金で財政支援し実効性を高めるとしている。なお、協力金の申請は各自治体のウェブサイトから行える。
時短協力しない店舗は罰則。改正特別措置法が公布
2021年2月3日に公布された改正特別措置法では、飲食店での感染拡大対策の実効性を高めるため、休業(時短営業を含む)に正当な理由なく応じない事業者に対して都道府県知事が命令することができるようになった。命令に応じない場合、緊急事態宣言の地域では行政罰として30万円以下の過料が科せられる。過料とは行政上の秩序を維持するために科される金銭的な制裁で、刑法の適用はされない。
しかし客が20時以降も店内に居座った場合などは、事業者が要請・命令に応じなかったとはいえず過料は科されない。この改正法は公布から10日後、2月13日に施行される。
宣言解除の目安は「ステージ4」からの脱却と医療体制の持ち直し
ステージ IV | 爆発的な感染拡大 |
---|---|
ステージ III | 感染者の急増 |
ステージ II | 感染者の漸増 |
ステージ I | 感染者の散発的発生 |
解除の基準は感染症の専門家による分科会が2020年8月に分類した感染状況4段階で最も深刻な「ステージ4」からの脱却が条件だ。
また、今後は新規感染者の減少傾向を継続させ、再拡大(リバウンド)を防止し、重症者数、死亡者数を確実に減少させることに加え、今後のワクチン接種に向けて医療機関の負荷を減少させ、変異株を的確に探知する状況が求められている。
先の見通せない状況は当分の間続くが、飲食店では今回は昼の営業やテイクアウト、デリバリーなどできることはある。昨年4月の緊急事態宣言時には、巣ごもり消費を見越して飲食店が食材販売する取り組みもあった。
また、バーチャルレストランの出店を強化し、デリバリー事業がイートインの売上を上回った事例もある。ほかにも、カレーやひと口餃子のテイクアウト販売で売上を伸ばした事例、サブスクリプション形式で集客を伸ばす手法などもある。
新たな店舗運営のやり方にチャレンジして、自店舗の強みを伸ばす方法もあるのではないだろうか。感染予防策を万全にしながら知恵を絞ってこの状況を乗り越えていきたい。また、特措法改正案など、現状で未定の部分は方針が判明し次第、随時おしらせしていく。
(参考)首相官邸 https://www.kantei.go.jp
(参考)NHKオンライン https://www.nhk.or.jp
インフォマートでは飲食事業者の方に向けて、コロナ禍におけるテイクアウトやデリバリー運営、感染症対策などの相談を受け付けています。お気軽にお問い合わせください。 相談窓口:https://www.infomart.co.jp/corporate/contact_im.asp ※表題に「コロナ対策の相談」とご記載ください |