「日本でも、店の予約や決済がスマートフォンでできるようになるなど、顧客向けサービスのIT化は進んでいます。一方で、バックオフィスと呼ばれる発注や経理業務、シフト管理などはマンパワー頼りの傾向です。現場がFAXや電話での発注に慣れてしまっているのもあるでしょう。なんとかこなしているから、コストをかけてまで、あえて変えようと思わないのかもしれません。
しかし、日本でとりわけ顕著なのが人手不足です。特に中小規模の企業では今後、どうしようもなくITを導入せざるをえないという段階になっていくでしょう。発注や在庫管理はスキマ時間ですませる、シフト作成も自動化するなど、あらゆる効率化を行う必要が出てくると思います」
テクノロジーの導入は、大手企業が自社のオペレーションに合わせて先行している。一方で、レストランテックの仕組みやサービスは、中小企業でも扱えるものが少なくない。数少ない大手をターゲットにするより、無数の小さな顧客をしっかり獲得したいという開発側の思惑もある。また、飲食店でのアルバイト経験がある開発者も珍しくない。飲食店領域は馴染みがあるだけに課題をみつけやすく、アプローチしやすいのも特徴だという。
思い描く飲食店の未来に、踏み出すための心がまえ
レストランテックの潮流は、ひとつのステージを越えつつあると、澤山氏はみている。
「テクノロジーはまず一般消費者向け(BtoC)から広がった後、企業間取引(BtoB)に浸透します。企業は新技術やサービスにいきなり飛びつくわけにはいかないので、社会に馴染んでから少しずつ使っていくのです。その視点でみると、最近のレストランテックは、企業向けサービスが消費者向けより増えている印象があります。テクノロジーがもう一段階進めば、ITに馴染みのない事業者でも意識せず使える仕組みが登場してくるかもしれません。
さらに、10年後、20年後にはバックオフィスは相当効率化されているはずです。経営者には、その時の自店舗のことを想像していただきたいですね。効率化の一方で、接客は残るでしょうから、人にしかできない仕事が今よりもっと重要になります」
今後も様々なサービスの登場が期待できそうだ。AIやロボットを使いこなせば単純作業がなくなり、人が本来やるべきことに集中させてくれる。激務に追われる飲食業界にこそ、なくてはならない相棒になるだろう。
取材協力:Coral Capital 澤山陽平氏