外食産業は構造的な人手不足に
外食産業は深刻な人手不足に直面しています。大手牛丼チェーンでは、パートが集まらないために営業時間を減らしたり、店を閉めたりする事態が発生しています。また、大手居酒屋チェーンでは、人手不足を理由に本年度中に全店舗の1割にあたる60店を閉店することになりました。
景気が回復傾向にあるというのに、外食産業はどうしてこれほどの人手不足に陥っているのでしょうか?最大の要因は、外食産業の中心となる担い手である15歳以上34歳以下の労働人口の減少です。
若い労働者の数は今後20年でおよそ700万人も減少すると推計されています。今のまま若年人口の減少が続くと、外食産業界は国内で日本人の若い働き手を見つけられなくなり、海外からの人材に頼らざるを得なくなります。
「団塊ジュニア」の主婦層を狙え
さて、ここで日本の人口ピラミッドをご覧ください。人口が多い層を表わす2つの大きな山があります。60歳代半ばの「団塊の世代」と30歳代半ばから40代にかけての「団塊ジュニア」です。マーケティングに長けたコンビニ業界は現在、40~50歳代の女性が買っていく家庭食メニューを充実させています。人口が多く顧客の中心になってきているからです。
外食産業の人手不足を解消する方法のひとつのヒントがここにあります。国内の労働 者不足を緩和する鍵と考えられているのが、主婦層の就業拡大です。子育てを終えた主婦が再び働きに出るため、団塊ジュニアは夫婦共働きが一般的です。そこでフリーターや学生アルバイトが不足する分を主婦層で補うのです。
求人難は職場環境と雇用形態を見直す機会
主婦アルバイトを多く採用している大手カフェチェーンは、土日・祝日は休みで残業もなく、子どもが熱を出した場合は「急な欠勤」も認め、主婦が働きやすい環境を整えています。その企業の人事担当者は「主婦は日常的に家事をしているので即戦力として採用できる。お昼のピーク時間だけ勤めてもらうだけでも助かる」と説明します。その結果、フルタイムで働く社員やバイトの業務が軽減され、労働環境が改善されることで離職率が減るのです。
主婦に勤めてもらうためには、主婦が働きたいと思える職場環境と雇用形態を整えておかねばなりません。主婦層はパソコンでなくスマホで情報収集し、ママ友ネットワークを通じて日常的に情報交換をしています。主婦に好感を持たれる情報発信を心がけることが人手不足を解消する近道でもあるのです。