消費税増税実施前に課題を明確にしておく
2014年4月1日から消費税率が8%、翌年10月1日から10%(予定)に引き上げられます。1997年に実施された3%から5%への増税後には景気が悪化し、事業者の消費税滞納金額が増加しました。増税後の消費の落ち込みによる「売上ダウン」と「コストアップ」をいかにして最小限に食い止めるかが、飲食産業にとって当面の課題です。消費税増税の負担を商品やサービスへ価格転嫁できない企業は、自らの利益を削って納税することになります。これでは企業経営を圧迫しかねません。
また、食材やメニューの価格表示については、これまで「総額表示」が義務づけられていましたが、今後は 「税抜き価格表示」が認められるようになるため、煩わしい作業が増えます。段階的な増税に伴い、消費税8%のときの値札と10%のときの値札の作成が必要になります(特例により2017年3月31日までは税別価格での表示が認められる)
従ってこれから、印刷物やウェブで表示している価格、レジに登録している税率の変更などの作業が生じます。経理担当者は、使用している会計ソフトが複数の税率に対応しているのか、確認しなければなりません。請求書の消費税額の表示にも目を通す必要が生まれてきます。
予想される影響に対して万全の対策を講じる
飲食店の場合、消費者の動向に敏感にならざるを得ません。とりわけ大衆向けの飲食店や生産者、小売業者が価格転嫁するには、それなりのハードルがあります。これまで価格を「税込み」で表示してきた事業者であれば、価格表示を「税抜き」にするのもひとつの方法です。
価格転嫁できない企業は、その理由を分析したうえで、価格転嫁に踏み切ることも検討してみてください。取引先との交渉や、価格の見直しによって可能になるケースもあるでしょう。経営面では、商品・サービスの向上に努めたり、事業の見直しが必要になってくるかもしれません。
ただし、増税に伴って税込価格を断行する場合、消費税の転化対策特別措置法に抵触する可能性が発生します。
小売店が増税分を値引きして集客する「還元フェア」は認められないということです。
軽減税率が導入されたらどうなる?
政府は2015年の消費税率の10%引き上げ時に軽減税率の導入を検討しています。食料品に軽減税率が適応されれば、納税額の計算が今まで以上に複雑化し、事務負担が増えます。これをマイナスと考えるのではなく経営を見直すよい機会と捉え、いち早い対策を講じていきましょう。発想を転換するなら、消費税増税は、取引先の検討やIT化によるコストダウン、事業の見直しを検討する絶好の機会でもあるのです。
■増税後に予想される影響
・価格転嫁ができるかどうか
・価格表示をどうするか
・メニューやレジ、会計ソフトの変更
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■問題の解決策
・商品・サービスの改善と向上・新商品・新分野進出による事業の見直し
・価格交渉や新規開拓による取引の見直し
・経理ソフトの導入、バージョンアップによる会計事務の見直し