大阪・関西万博が描いた、共に創る未来の姿
私が関わっている大阪・関西万博では、これからの観光や地域コミュニティの在り方を示す実証実験を数多く行っています。1970年の大阪万博は太陽の塔という一つの答えを提示する場所でしたが、今回の万博はたくさんの未来を皆で考え、共に作り上げる場です。
その象徴が、万博のリングです。この巨大な屋根の下で、世界中の人々が同じ空を見上げる。文化や背景が違っても、夕陽が沈む瞬間の美しさを共有することで、身体的な一体感が生まれます。これは、効率性とは真逆の、体験の共有によって生まれる新しい価値の形です。四天王寺で古くから行われてきた西に沈む夕陽を拝むという体験のように、時代を超えて人々の心を動かすのは、こうした身体的な五感体験なのです。
飲食業を営む皆さまにとっても、お店は単に食事を出す場所ではなく、顧客と共に未来の豊かさを分かち合う共創の場になり得ます。料理を通じて、生産者の想いや地域の歴史を伝え、それをお客さまと分かち合う。このような体験の設計こそが、デジタル時代のファンづくりに欠かせない要素となります。
AI時代にこそ輝く五感と健康の結びつき
生成AIが登場したことで、私たちは知識を得る手間から解放されました。しかし、AIには決してできないことがあります。それは食べることであり感じることです。デジタルが日常を覆い尽くすからこそ、五感をフルに使う食体験の価値はますます高まっていきます。
私が進めているウェルビーイングの取り組みでは、データを使って一人ひとりに最適な食を提案する試みも行っています。これまでは、おいしいものを食べれば食べるほど健康から遠ざかるというイメージもありましたが、これからは違います。“食べれば食べるほど、身体も心も豊かになる食を、データと感性を組み合わせて提供することができるようになるのです。
AIにライフスタイルをサポートしてもらいながら、人間は五感を存分に楽しむ。飲食店は、その生きる喜びを体現する最も重要な拠点となります。顧客一人ひとりのバイタルデータに基づいたパーソナライズされたメニューを提供しつつ、空間や接客で人間ならではの温かさを届ける。そんなハイテクとハイタッチが融合した未来が、すぐそこまで来ています。
未来の観光は関係を編み直す旅になる
最後にお伝えしたいのは、これからの観光は一時的な消費で終わるものではないということです。デジタルの力を使えば、旅が終わった後も地域と顧客の繋がりを持ち続けることができます。いわゆる関係人口として、遠く離れていてもその地域の食を楽しみ、コミュニティに参加し続ける。
皆さまのお店が、そんな新しい繋がりの起点になることを期待しています。お店で提供する一皿が、その地域の未来を共に作るきっかけになる。命の輝きをテーマにした私たちの万博が目指すのも、まさに一人ひとりが自分たちの未来を主体的に描き始めることです。
飲食産業は、日本が世界に誇る中核産業であり、地域の誇りを作る原動力です。効率の先にある五感体験と、デジタルによる持続的な繋がりを組み合わせ、皆さまと共に新しい日本の豊かさを創っていけることを楽しみにしています。











