受注事務の標準化に向けた取り組み
【Q】人手不足に関する課題や業務改善に向けた取り組みについて教えてください。
い印グループ・萩原会長:仲卸を買収した際、受注業務が非常に煩雑でした。人手もかかり、ミスも多い状況だったのです。そこで、納品業務に特化し、八百屋への卸をやめ、飲食店と給食会社への納品に限定しました。
しかし、飲食店や給食会社からの発注方法はまちまちで、電話やファックスなど様々な手段で注文がきます。当社は「いつでもお受けします」「いつでも持っていきます」という対応で、ミスがあれば返品や再配送が発生し、24時間稼働のような状態でした。
無駄やムラが多く、人手不足以前に業務プロセスの問題です。改善を進め、100ある課題のうち60から70までは解決しましたが、残りの課題が解決できませんでした。そこで今、インフォマートと受発注の改善に取り組み、さらなる解決を進めています。
農経新聞社・宮澤社長:受注の業務効率化では、手書き注文のデジタル化は基本です。時間短縮のために何をどうすべきか、自社だけではなく、顧客に発注方法を変えていただくため、折衝も含めて検討する必要があります。
い印グループ・萩原会長:1970年代にスーパー業界でチェーンストア統一伝票が導入された際、顧客側が統一しされたため、当社では受発注業務が効率化され非常に楽になりました。
現在は逆の立場で、伝票を統一してほしいと提案しています。卸は顧客からの提案は受け入れるのですが、こちらから顧客に提案するのは困難です。発注フォーマットをシステム会社と一緒に作成し提案していますが、最終的に受け入れていただけない顧客もいます。中小より大手顧客の方が「うちはこうだから」といって発注の統一化は難しい状況です。
例えば、病院給食では、1食あたりの単価や栄養計算に頭がいっぱいで、発注方法のシステム変更に関心が低い傾向があります。インターネットを使うと個人情報の流出につながるといって、理解が得られないこともあるのです。
農経新聞社・宮澤社長:それでも、やはり交渉はとても重要です。コロナ禍の当時、ある仲卸の主要顧客であるスーパーの発注締め時間が午後3時から4時だったものが、6時や7時まで遅くなっていました。自社の過密回避と働き方改革のため、仲卸会社の社長が意を決し、発注時間を通常通りにするよう申し入れたところ、すんなりと了承されたのです。
この事例では、スーパーの店舗担当者が徐々に発注時間を遅くしていたのが実態でした。仲卸は言われるがまま注文対応しており、スーパー本部からの指摘はありませんでした。しかし、仲卸の社長が過密回避と働き方改革を理由に元の時間に戻すよう交渉したところ、スーパー本部側も働き方改革を進めたい状況だったため、すぐに条件変更が受け入れられたのです。これは、交渉してみなければ分からない、前提を見直す必要性を示す事例ではないでしょうか。
経営者の意識改革と組織浸透の徹底
【Q】現場の改革を進めるには、何が必要でしょうか?
農経新聞社・宮澤社長:何を実施するにしても、まず経営者の意識改革が第一です。それを現場で徹底するには、経営者自身の強い意志を示すことが必要です。
ある大手仲卸の社長は、自分の考えと会社の方針を社員に徹底するため、毎月のミーティングで、最初の15分は社長就任以来20年近く同じことを伝え続けているそうです。経営者の考えが社員に浸透しているかは不明で、浸透していないと考える。だからこそ、自分がブレていないことを示すために同じことを言い続けることが必要だというのです。
また、採用について、ある大手の卸売会社は営業企画部署を作り、高卒の10代女性3人を採用しています。業務内容はインスタグラム更新や商品企画を考えることで、若年層を採用するための窓口を作る取り組みです。この事例に対し「大手だからできる」という反応がありますが、では「自社はどうするのか」と考えることが大切でしょう。












