FAX・電話受注から脱却へ。食品卸・メーカーが取り組むバックヤードDX改革~東京キリンビバレッジサービス・北海道コカ・コーラボトリング・デリカフーズ・山口油屋福太郎

セミナー・イベントレポート2025.11.10

FAX・電話受注から脱却へ。食品卸・メーカーが取り組むバックヤードDX改革~東京キリンビバレッジサービス・北海道コカ・コーラボトリング・デリカフーズ・山口油屋福太郎

2025.11.10

FAX・電話受注から脱却へ。食品卸・メーカーが取り組むバックヤードDX改革~東京キリンビバレッジサービス・北海道コカ・コーラボトリング・デリカフーズ・山口油屋福太郎

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食品業界では、飲食店や給食事業者などが仕入れ品を発注する場合、未だにFAXや電話が主な手段となっている。これにより、注文を受ける卸売やメーカー側では、紙や音声による商品特定の難しさ、基幹システムへの入力負担、属人化による個人への業務集中といった問題が発生している。

これらの課題を解決するため、卸売を主事業とする山口油屋福太郎(福岡)、デリカフーズ(東京)、北海道コカ・コーラボトリング、東京キリンビバレッジサービスの4社が9月に開催されたイベント「インフォマートサミット・ハーモナイズ2030」に登壇し、課題と解決策、成果についてディスカッションした。

目次

FAX・電話受注による各社の課題

株式会社 山口油屋福太郎 近郊卸売営業セクション 営業推進Bチーム チームリーダー 中村 美仁 氏
株式会社 山口油屋福太郎
近郊卸売営業セクション
営業推進Bチーム
チームリーダー 中村 美仁 氏

山口油屋福太郎・中村:当社は福岡を拠点に、飲食店や学校給食、病院などに、業務用の食品や備品を配送しています。

お取引先様からは、月間5,500枚のFAX注文が届きます。用紙の社名を見て該当する配送ルートに仕分けし、基幹システムへ手作業で注文内容を入力していました。

さらに、取引先ごとに注文処理のルールが違うため、業務が属人化してしまい担当者は休みを取りにくい状況が続いていました。



 

デリカフーズ株式会社 受注本部 高橋 欣也 氏
デリカフーズ株式会社
受注本部 高橋 欣也 氏

デリカフーズ・高橋:当社は、全国3万店舗の外食・中食産業様に向けてカット野菜や冷凍野菜を製造販売しています。

年々の企業成長につれて受注量も増加し、今では月間6,000枚のFAX受注に人員を割いています。同時に、雇用難と賃金上昇も続いています。

お取引先様には経費増加の負担をなるべくかけないために、業務を標準化して少人数による運用をする必要がありました。


 

北海道コカ・コーラボトリング株式会社 グループ経営管理部 DX推進課 小野 浩嗣 氏
北海道コカ・コーラボトリング株式会社
グループ経営管理部 DX推進課
小野 浩嗣 氏

北海道コカ・コーラボトリング・小野:当社は、北海道内で飲料の製造・販売をしています。電話注文を受けるコールセンターでは1件あたり3分、FAX注文は6分の対応時間を要していました。

電話注文は月間5,000件、FAX注文は6,000件あり、それに伴う膨大な作業時間が深刻な課題でした。

また、電話での受注は24時間の対応ができないため、FAXを持たない夜間営業主体のバーや居酒屋様に対応するため、スマホを使った受発注の仕組みが必要だったのです。
 

 

東京キリンビバレッジサービス株式会社 湾岸支店 支店長 茂呂 強 氏
東京キリンビバレッジサービス株式会社
湾岸支店 支店長 茂呂 強 氏

東京キリンビバレッジサービス・茂呂:当社では清涼飲料水や食品の販売が主な事業です。一都三県で自動販売機を介して商品を販売するほか、リテール事業として卸売業や、キッチンカーで商品を販売して回る小売業もしています。

受注業務の課題は、FAX、電話、メールに加え、お取引先様ごとに個別のEDIシステムからご注文を受けるという、多種多様な経路の対応でした。

受注チャネルが乱立しており、これらを一元的に管理することが喫緊の課題となっていたのです。

アナログな注文をデジタル化した手法

山口油屋福太郎・中村:当社としては、インターネットを使った受発注システムでの発注をお取引先様に推奨しています。しかし、スマホなどで手軽に発注できることから、情報漏洩などのリスクを懸念して、FAX発注の継続を希望されるお取引先様が一定数いらっしゃいます。

そこで、FAX発注書をOCRでデジタル処理して受注処理するサービス『発注書AI-OCR』を導入したのです。用紙に書かれた注文内容をAIが読み取り、基幹システムの商品マスタデータと照合して正確に受注するものです。お取引先様ごとにばらばらだったFAX発注書のレイアウトも統一したことで、受注の属人化を解消しました。

デリカフーズ・高橋:当社は、自社開発した受発注システムを使って、お取引先様に発注いただいていました。しかし、このシステムではお取引先様は当社の商品しか発注できず、他社の商品もまとめて発注したいというご要望には応えられませんでした。

インフォマートの受発注システム『TANOMU』であれば、お取引先様は当社の商品はもちろん、他社様の食材や資材も一度にまとめて発注できるので、活用しています。スマホで発注できることも利便性の向上につながっているようです。

また、FAX発注を継続されるお取引先様には、FAX発注書を受注処理するサービス『発注書AI-OCR』を導入しました。お取引先様によっては、自社の販売管理システムからFAX発注書を印刷する仕組みがあるので、どうしてもインターネットを使った発注はできないという方がいます。そのような方はそのままFAX発注を続けていただき、当社側でOCR処理することで、会社全体で受注方法のデジタル化を推進しています。

北海道コカ・コーラボトリング・小野:当社も『TANOMU』を使用しています。注文方法をデジタル化するうえで最も大切なポイントは、ゴールまでのビジョンを持ち、全社で共有することだと思います。

デジタル化する受発注ツールは、お取引先様が使用されます。そうなれば、営業担当がお取引先様に発注方法を説明します。営業担当はお取引先様に商品をご案内することが本来の仕事ですので、お取引先様のメリットはもちろん、当社の営業担当にもメリットはあるのか、負担はないかなどのビジョンを持って、全社で同じ方向に向かう体制構築が必要です。

当社では、営業担当の皆さまに向けて『TANOMU』の説明会を開き、受発注システムを使うことのメリットを説明して社内協力を取り付けました。

東京キリンビバレッジサービス・茂呂:当社は7月下旬に受発注システム『TANOMU』を導入したばかりです。導入の決め手は、当社での扱いやすさと、お取引先様の発注のしやすさを両立できるシステムだったことです。現在も支店ごとのお取引先様に順次ご案内し、運用の改善を続けています。

受注をデジタル化したことによる成果

山口油屋福太郎・中村:FAX発注書をデジタル処理したことで、受注業務は計上作業から確認作業へ変化しました。ミスが減ったので、お取引先様からの信頼も向上したと思います。何より、職場にゆとりが生まれたのは大きいです。従業員間の会話も増えて、残業もゼロになり、有給休暇も取得できるようになりました。働き方改革が進んだと思います。

デリカフーズ・高橋:当社では、日々翌日の納品分を飲食店様からFAXでいただいています。届いたFAXを仕分けして日付などを確認する作業に1名、入力担当者1~2名、入力内容のチェックに1~2名、最大5名で受注対応していました。

これがデジタル化により1名で回せるようになりました。さらに、手書き文字の読み間違いによる誤配送と臨時配送もなくなったのです。これは非常に大きなメリットです。商品の改廃情報を受発注システムにすぐ反映できることや、販促情報を即座に配信できるようになったことも利点の一つです。今振り返れば、見えない経費がとてもかかっていたと思います。

北海道コカ・コーラボトリング・小野:当社ではもともと電話・FAX受注が月間12,000件ほどありました。そのうちの33%が受発注システム『TANOMU』でデジタル化され、年間4,500時間の業務効率化ができたのです。その余剰により、コールセンターで培われたスキルを、受発注対応以外の営業支援業務に回すことができるようになったのも大きなメリットです。

さらに、受発注システムを使うことで24時間の発注・受注が可能になりました。当社では、『TANOMU』を使った発注に切り替えていただいたお取引先様からは、5%ほどの売上増加が見られました。

東京キリンビバレッジサービス・茂呂:当社はまだ受発注システムの導入初期です。受注業務をデジタル化した背景は、バックオフィス業務全体を改革する一環です。これまで10拠点に分散していた受注業務をひとつのセンターへ集約する計画を進めています。プロセスを横断的に見直すことで、バックオフィスのムダ削減と業務標準化が進むでしょう。その後、コカ・コーラさんと同様に営業面での効果も狙っていく予定です。

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