瀬川「96世代はコミュニティを作る中で、自分がそのコミュニティに貢献できる強みや、協調性、価値観の異なる人の考えを容認する能力を求められます。そのようなことを『やりがいがある』と思える人もいるでしょう。そんな彼らが活躍できる領域は何かと考えると、コミュニティリーダーではと思います」
96世代は自己決定を繰り返してきたため、自分の内側からやる気を起こす“内発的動機”を特に重視する人が多いと考えられる。その場合、やる気を出すためにはインセンティブなどの外的な条件提示ではなく、内発的動機が生まれる環境を作る必要がある。
瀬川「内発的動機が生まれる環境は、有能感、自立性、関係性の3つを保つための条件を揃えることが必要です」
有能感とは、その人が能力を存分に発揮したと思える環境を作ることで生まれる。悪い例として、100メートルを10秒で走れる人に13秒で走らせるようなことはしてはいけない。自立性とは、最初から最後まで自分で決めて自分でやり切れる環境を作ること。そして最も重要なのが関係性だ。競走馬のように全員ライバルとみなして人との関係が断絶した体制ではなく、チームとして何かを作っていく環境が必要だ。
中村「大手の経営コンサルタントと社員の接し方について話をしても、今までの上下関係ではなく、ユーザーやお客さんのように、いかに永続的に共感する関係性を作れるかだといいます。これは飲食業界に限ったことではなく、社会のあちこちで同じことが起きている感じがします」
飲食店が取り組むべきコミュニティ作り
次世代の若者と飲食店の価値観の変化は、“コミュニティ作り”で共通する。では飲食店が取り組むべきコミュニティ作りとは、どういうことか。カフェ・カンパニー株式会社 代表取締役社長の楠本氏が、実例としてコミュニティ作りのプロジェクトを紹介した。
楠本「飲食でコミュニティを作ることが私の生業です。飲食業の強みは、経理、接客、製造などの現場をひととおり経験できることで、仕事を通じて人間力、エンゲージ力を高められます。社内でも、コミュニティプロデューサーにどうなっていくかが、店長の次のキャリアとして大事という話をしています」
瀬川「楠本さんは、渋谷でコミュニティプロジェクトの参画をされていますね」
楠本「今、渋谷にガレージをお借りして、飲食、プレゼンテーション、コワーキングできるスペースを作り、パナソニックさん、ロフトワークスさんとの3社共同で“100 BANCH”というプロジェクトをしています」