次世代を担う若者の価値観
価値観を転換するにはどうすればよいか。未来総研は視点を変えて、これからの飲食業界を担う現在22~32歳の世代に焦点を当てた。この世代を生まれた年の1986~96年にちなんで86(ハチロク)、96(キューロク)世代と呼び、育ってきた時代背景から価値観を捉えていった。
瀬川「86、96世代が、まさにこれから飲食業界を背負っていく方々になります。実はこの世代、ミレニアル世代、ゆとり世代・さとり世代、デジタルネイティブなど、史上最多の世代レッテルを張られているのです」
ミレニアル世代とは2000年代に成人、社会人となる世代を指す。モノ消費に消極的、シェアやボランティア意識、自己成長意欲が高いなどの特徴があるといわれている。また、デジタルネイティブとは、学生時代からインターネットやパソコンのある生活環境の中で育ってきた世代となる。
<96世代の年表>
多くのレッテルを張られた96世代がどのような時代に育っていったかを振り返ってみる。生まれた年の1996年当時は就職氷河期で、デフレが長く続いていた。小学校入学時には授業時間を削減したいわゆるゆとり教育が導入され、米国の同時多発テロに端を発したテロとの戦いが世界中で始まった。その後、中学校入学時にリーマンショックによる金融システム不安が世界中に広がり、高校入学時に東日本大震災、原子力発電所のエネルギー問題が議論された。
この時代に起きたことを表すと、これまで疑われることのなかった国や大手企業などの組織や制度の安全神話が崩れ、社会的な規範が失われていったといえる。つまり、 “この組織のこのルールを守っておけば社会的に大丈夫”という考え方は通用しなくなったのだ。このような環境で育った96世代は、判断を求められる場面で何を選択して何を捨てるかを自己責任で決めることを教育されていった。
瀬川「“自分で考えて決めなさい”と教えられるのですが、自分ひとりでは決められない場面も当然あります。そのような状況でアドバイスしてくれる人が身近にいない場合、96世代は自分に必要な人を自分で見つけ出して、協力し合えるコミュニティを形成することを余儀なくされます」
デジタルネイティブの96世代がコミュニティを作る際、SNSなどを活用することもあっただろう。ここで、社会人となった彼らが活躍できる環境やポジションを、経営者はどう作るかに話が及んだ。