高付加価値商品・細分化ニーズ対応・成長市場参入がカギ。食品業界の人材不足対策~リライズコンサルティング株式会社 代表取締役社長 中山 裕介 氏

卸・メーカー2025.03.27

高付加価値商品・細分化ニーズ対応・成長市場参入がカギ。食品業界の人材不足対策~リライズコンサルティング株式会社 代表取締役社長 中山 裕介 氏

2025.03.27

高付加価値商品・細分化ニーズ対応・成長市場参入がカギ。食品業界の人材不足対策~リライズコンサルティング株式会社 代表取締役社長 中山 裕介 氏

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あらゆる業界で人材不足が深刻化する中、食品製造業界は特にその影響が顕著にあらわれている。求人市場では企業の募集広告が増加し、採用競争が激化。労働人口の減少も相まって、適切な人材の確保が一層困難になっている。

その結果、採用コストの上昇に加え、既存従業員の負担増加による労働環境の悪化や、経験の浅い社員による現場対応を余儀なくされることで、商品・サービスの品質低下を招いている。これが売上減少につながり、待遇改善が難しくなることで、更なる人材流出を引き起こしている。

こうした負のスパイラルに、食品メーカーはどう立ち向かうべきか。食品業界の業績アップを専門とするリライズコンサルティング(株)の中山裕介氏に、課題解決の糸口を聞いた。

目次

食品製造業界が採用難になる理由

リライズコンサルティング株式会社 代表取締役社長 中山 裕介 氏
リライズコンサルティング株式会社
代表取締役社長 中山 裕介 氏

食品製造業界は、全業界の中でも特に採用が困難な状況です。その主な要因は3つあります。第一に、給与水準が相対的に低いこと。第二に、3K(きつい・汚い・危険)のイメージを持たれていること。第三に、勤務地が地方・郊外に集中しており、職種の魅力が十分に伝わっていないことです。

3Kのイメージについて、実際の食品工場では衛生管理が徹底され、清潔な環境が保たれているにもかかわらず、外部からは依然として3Kというネガティブな印象を持たれています。こうした要因が複合的に作用し、食品業界は他業界と比べても、より深刻な採用難に直面しているのが現状です。

人材不足の改善に向け、多くの企業が採用方法の改革に取り組んでいます。例えば、採用専用のホームページを作成して社員の声を掲載することや、SNSを活用するなどの施策が挙げられます。しかし、問題の本質を解決しないまま、表面的な見せ方だけを改善しても、その効果は限定的です。

根本的な要因は、給与水準の低さにあります。その理由は、食品企業がケチだからでも、役員報酬が高すぎるからでもありません。そもそも、利益率が低いのです。企業の利益が少なく労働分配率(付加価値に対する人件費の割合)が高い状況では、給与の上昇は困難です。
この問題を解決するために重要なのは、企業の利益率向上と従業員一人当たりの生産性の向上です。そこで、収益確保のための有効な施策として、マーケティング戦略の見直しが挙げられます。

対策1. “所得の二極化”に対応した高付加価値商品

現在、消費者の消費行動は二極化が進み、お金をかけるものと節約するものを明確に区別する「メリハリ消費」が顕著になっています。食品業界の代表的な例として、2024年のおせち料理が挙げられます。10万円以上の高級おせちは供給が追いつかないほどの人気でしたが、一方で15,000円程度の低価格おせちも好調でした。高価格帯と低価格帯のそれぞれで、大きな市場を形成しているのです。

しかし、中小企業が低価格帯の市場に参入しても、大手には勝てません。だからこそ、高価格帯の商品にフォーカスする必要があります。高価格帯の商品はインバウンド需要とも相性が良く、海外市場への展開もしやすいメリットがあります。

当社がコンサルティングを行った多くの食品企業は、高付加価値商品へシフトすることで業績を伸ばしています。例えば、ある酒造メーカーでは、お祝い用途として4合瓶(720ml)の日本酒を38,500円で販売してヒットしています。また、静岡の製茶メーカーは750mlのボトルティーを25,000円ほどで販売し、高級ホテルに採用されました。その他にも、2パック2,160円の高級納豆や、5,400円の高級ツナ缶、1本4,800円の高級ガトーショコラといった商品が市場で成功をおさめています。

重要なのは、高単価な商品を作ることではなく、高付加価値を持たせることです。高付加価値商品とは、原材料や製法にこだわり、その価値が消費者に正しく伝わるものです。企業がこの点を理解し、消費者のニーズに合ったビジネスを展開することが、成長の鍵となります。

対策2. “ニーズの細分化”を捉えた商品展開

高付加価値商品に限らず、マーケティング視点を広げることも重要です。消費者の購買経験の変化に対応し、より細分化されたニーズに応えることが求められます。例えば、ギフト市場では、どんな用途にも合う多目的商品が多く販売されていますが、現在の消費者は、より具体的なシーンに適した商品を求めています。母の日専用ギフトやバレンタイン限定の商品に加え、専用パッケージを用意するなど、特定の用途にぴったりの商品を提供することで、より強い購買動機を生み出すことができます。

消費者の購買行動の変化に対応し、成功した例もあります。その一つがソーシャルギフト市場です。相手の住所が分からなくても、LINEなどのアカウントが分かれば商品を配送できるという、新しい購買の仕組みです。LINEギフト市場では、母の日の流通金額が前年比60%増となっています。

鳥取県の酒類卸売業では、以前はネット通販はやっていませんでしたが、LINEギフトを活用することでEC売上8億円を達成しました。その7割がソーシャルギフトによるものです。

リライズコンサルティング株式会社

本社所在地:大阪府大阪市中央区安土町2-3-13 大阪国際ビルディング10F
創立:2015年5月15日
代表者:代表取締役社⾧ 中山 裕介
公式Webサイト:https://rerise-consulting.com/

 

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