訪日中国人数の伸びと消費額
日本政府が「観光立国」の旗と、訪日外国人旅行者1000万人を目標に掲げたのは2003年のこと。2012年に発足した安倍政権の「アベノミクス」による円安進行をはじめ、観光ビザの要件緩和、LCC(格安航空会社)の拡大などの影響で、2013年には年間1000万人の大台を越える1036万人の旅行者が日本を訪れた。以降、2014年は1341万人、2015年は11月までですでに過去最高となる1796万人と、増加を続けている。(訪日外国人旅行者数のデータは日本政府観光局の発表に基づく、以下同)
こうしたインバウンドの増加傾向を支えているのが、中国からの訪日旅行者だ。2013年こそ131万人と前年を下回ったが、2014年は240万人、2015年は11月までで464万人と大幅な伸びを見せている。
特筆すべきは、彼らの消費意欲とその額である。観光庁の訪日外国人消費行動調査によると、訪日中国人の旅行消費額は2014年に対前年2倍を超える5583億円、2015年は9月期までの速報値で4660億円となっている。もちろん、この消費額は訪日外国人の国別トップだ。今夏にあった中国株式市場の暴落など、景気の減速の影響を懸念する声もあるが、日本への旅行需要は当面は堅調と見られている。
「爆買い」一辺倒から新たな消費の動き
「爆買い」という流行語を生んだ、中国人の消費行動。この背景には、どのような要因が存在しているのだろうか。
フィールドマーケティングサービス(北京)有限公司 日本オフィス代表の坂本晃一さんに、専門家としての見解をうかがった。
「現在、インバウンド消費による売上の6~7割は中国、台湾、香港といった中国語圏からの旅行客が占めています。その中心となる中国で言うと、今は北京、上海、天津をはじめとした沿岸部の1級、2級都市の人たちが主流です。いわゆるセレブ、富裕層ですね。ただ、中国国内の経済状況を見ると、内陸部に位置する3級、4級都市の人たちの収入が上がってきていることもあり、今後はそこからの訪日客も増えていくと見込んでいます。爆買いの流れはまだまだ続くでしょう」
ただ、これまでのような「爆買い」一辺倒の消費とは別の動きも出てきているという。