「アジア各国を巡るクルーズツアーの途中に日本へ立ち寄り、数時間の滞在でショッピングスポットを訪ねて買い漁る爆買いの様子は、テレビなどでよく目にすると思います。もちろん、こういった流れは継続するでしょう。一方で、リピート客による、個人の嗜好を重視した買い物が多くなっていることも事実です。弾丸買い物ツアーではなく、よりディープに買い物を楽しむ人たちが増えてきていますね」
中国人観光客はあらかじめ買うものを決めている
単なる爆買いから一歩踏み出した新たな買い物の楽しみ方も登場してきているとはいえ、中国人インバウンドの消費行動に共通する傾向はあるのだろうか。
「日本を訪れる中国人旅行者の目的は、観光やグルメももちろんですが、やはり買い物です。そのため、事前に綿密な情報収集を行い、あらかじめ買う商品を決めています。また、家族や友人などから『日本に行くなら、アレとコレを買ってきて』と商品を指名されます。つまり、『こんなものが欲しい』ではなく、『○○メーカーの◇◇』をピンポイントで狙って買いに来るわけです」
確かに、ドラッグストアやディスカウントショップを賑わす中国人客は、スマートフォンやタブレット、手書きのメモなどとにらめっこしながら商品を探している。
「そういった人たちをよく見てみると、食品の場合、中身がどうなっているのかを気にしていることが分かります。なぜなら、おみやげとして買うからです。お菓子類を例に挙げると、大袋のおかきのように裸でガサッと入ったものではなく、帰国後におみやげとして配りやすい、個別包装されているものを選びます。また、サイズが大きくかさばるものは敬遠します。出国時に持ち出せる手荷物には制限があり、ほかのものが買えなくなってしまうからです」
爆発的な消費を支える口コミのネットワーク
では、爆買いの恩恵を受けて売れている商品は、何か対策を練ったうえで作られたものなのだろうか。
「私が知る限り、食品に限らず、中国人の旅行者に向けて仕掛けて売れたという実例はほとんどありません。これだけ爆買いが騒がれる今、仕掛けたいと思っておられるメーカーさんは多いですし、相談も増えています。ただ、単に仕掛けて売れるというものではないことは事実です」
そんな中で有効なのは、インバウンド向けの商品開発ではなく、プロモーションだと言えるだろう。
「ご存知のように、中国は口コミ社会で、広告などの売り文句は信用しない傾向にあります。家族や友人が『良い』と言ったなど、口コミを信用するわけです。そんな口コミ情報が中国国内でどのように流れているかというと、中国独自のSNS『微博(ウェイボー、Weibo)』や『微信(ウェイシン、WeChat)』です」