1.経験に頼り過ぎない物流管理を実現
ほとんどの大手企業は、すでに何らかの物流システムを導入しています「大手物流の競争はシステムの競争だ。」と言われるほどです。一方で、中小の食品企業は販売管理用のシステムを改良して、物流に使用する程度でしたが、こちらもここ数年で急速に物流専門のシステムの導入が進んでいます。
中小の食品企業にもシステム導入が進んだ理由として、物流業界向けのシステム開発に参入する企業が増えたことにより、導入コストが下がったこと。また各企業の特性に合うシステムが増えてきたことなどが挙げられます。
また、物流の管理業務は経験値の高い人にしかできない、として属人化してしまいがちでしたが、システムの導入によって一定のスキルさえあれば、高齢者や女性などを含めた経験値の浅い人材を活用できるようになるのです。
では、物流システムとは一体なんなのでしょうか。一言に物流システムと言ってもいろいろありますが、ここでは倉庫のオペレーションに必要な『WMS』と、輸配送の効率化に役立つ『TMS』をご紹介します。
2.倉庫管理や輸配送管理に役立つシステムとは
倉庫管理システム - WMS(Warehouse Management System)
倉庫内業務の管理を効率化するためのシステムで、在庫管理から出荷まで倉庫やセンター内の作業を一元管理するものです。
食品特有の日付管理やメーカーの製造計画、また小売業の特売計画などの情報を取り込むことや在庫の動きをデータとして取り込むことで、作業生産性を高めることが可能になります。このデータを利用して、前回の「すぐできる物流改善_取引条件編」でお話したようなロケーションやレイアウトの変更も、より実態に近いものにすることができます。
輸配送管理システム - TMS(Transport Management System)
主に配車計画や配送ルートの構築、伝票や日報の作成、運賃計算など輸配送に関する情報を一元管理するものです。地図ソフトとの連動により、最も効率的な配車ルートを設定することも可能で、担当者の勘や経験に頼らない配送計画を簡単に立てられるようになります。
例えば、手作業で作ると数日かかってしまうような大規模な配送ルート案もおよそ数分で算出可能です。さらに配送に関する条件も、トラックの最大積載量や労働時間、納品可能時間も細かく設定できます。
上記2つのシステムの導入だけでも、物流の効率が飛躍的に進む可能性があることが解ると思います。
3.システムの導入の際に気をつけるべきこと
システムの導入に関してよくあるトラブルは宣伝や広告のみでソフトや物流機器を選んでしまい、導入後に自社の実情に合わないと気づいた。というパターンです。
現場の問題点は、企業によって似ているようでも細かい違いがあります。まずは現状分析を十分に行い、自社の問題点を明確にすること、そして、どんな製品をどんなスピード感でどのくらい配送するのか、など長期的な目標をはっきり定めることが、システム導入を成功させるための鍵になります。
物流システムは、数千万円から普及型のパッケージタイプでも数百万円という高額な商品です。自社での導入が難しい場合は、既存の取引物流企業に相談してみると良いでしょう。物流企業にとっても、作業性の上がるシステムが導入されることは決して不都合なことではないからです。例えば、先に物流企業のほうでシステムを導入してもらい使用料を払う形や、共同で購入する形も視野に入れて話し合ってみると良いでしょう。
いかがでしたでしょうか。
様々な効果が期待できるシステムの導入は、24時間365日きめの細やかな対応が求められる食品物流においても、非常に大きな効果が得られるものです。一度検討してみてはいかがでしょうか。既存のシステムでお困りの企業は、まずはそのシステムが自社の課題にマッチしているかを検証してみると良いと思います。
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さて、1年以上にわたり、食の物流やその改善案についてコラムを掲載させていただきましたが、今回が最終回となりました。
最後まで読んでいただきありがとうございました。
私が現場で感じていた冷凍・冷蔵の食品物流の知識が、みなさんのビジネスの中で少しでもお役に立てば幸いです。
それでは次回、またどこかでお会いしましょう!