客室清掃は顧客満足度に直結する
清掃サービスの質はお客様の満足度に直結する要素のひとつだ。しかし、ホテル業界では長時間労働や休みが取りにくいなどの理由から、就業者が少なく人手不足の状態が続いている。最近はインバウンド需要の回復により深刻化している状況だ。
少ない人数でも効率的に行うには、清掃業務の見直しや効率化は必須といえる。
客室清掃の基本的な効率化方法
ここからは効率化方法を解説する。
標準化された清掃プロセスの構築
清掃業務を効率化する第一歩として重要なのは、清掃プロセスの構築である。
部屋のゴミ捨てやバスルームの清掃など、清掃には多くのタスクがある。人によってやり方が異なっていると質がまちまちになり、作業時間にも個人差が出てしまうだろう。また、手順が定まっていない場合、やるべきことを忘れてしまう恐れもある。
スタッフ全員が同じ作業を高い品質、同じ時間内に行えるよう、清掃プロセスを一度洗い出すことが重要だ。
清掃マニュアルの作成と活用
口頭で清掃プロセスを伝えるだけでは、伝達漏れや作業が定着しづらくなるため、マニュアル作成と従業員教育が欠かせない。マニュアルには、効率的に清掃できるような手順を記載することが重要だ。
写真を中心としたマニュアルにすれば、より伝わりやすくなる。具体的には、アメニティの並べ方やベッド上の状態などを写真に撮って掲載するのが効果的だ。マニュアルには、業務内容や清掃を効率的に進める手順はもちろん、注意点も記載しよう。
清掃クオリティの維持とスタッフ教育
清掃の質を保つためには、スタッフ教育が重要なポイントだ。ここでは、清掃クオリティの維持とスタッフ教育はどのように行っていけばいいのかを解説する。
清掃チェックリストの活用
清掃クオリティを維持するためにおすすめなのが、チェックリストの活用だ。リストがあれば作業を漏れなくチェックできるため、クオリティ維持が可能になる。
清掃の品質維持のためのチェックリスト
チェックリストの例は、以下の通り。適宜必要な項目を入れ、さらに目安の時間も記載するといいだろう。
点検箇所 | 項目例 |
---|---|
室内 | ● 掃除機 ● 拭きあげ掃除 ● ゴミ・消耗品の処分 ● エアコン調節 ● 時計の確認 |
寝具 | ● シーツ・枕の交換 ● 消耗品の処分 ● しわチェック |
浴室 | ● 浴室の掃除・拭きあげ ● ゴミ・消耗品の処分 ● アメニティ補充 |
トイレ | ● 便器掃除 ● 消耗品の処分・補充 |
その他 | ● 電球の点検・交換 ● クローゼットの掃除 ● スリッパ・ハンガーの点検・補充 |
継続したトレーニングと教育方法
清掃効率を上げるためには、スタッフのトレーニングが欠かせない。マニュアルを事前に配布し、定期的に研修を行ったり教育係から指導をしたりするといいだろう。経験に則った掃除のコツやホテル独自の注意点がある場合は、マニュアルに記載するだけでなく、実演して伝えることで、定着しやすくなる。
研修では、問題点を共有・解決方法を話し合える場を設けるとより効率化が進むだろう。
清掃スキルの向上を促すトレーニング方法
清掃スキル向上を促すトレーニング方法には、グループホテルに従業員を出向させたり動画マニュアルによる指導を行ったりする方法も挙げられる。グループホテル同士で相互に従業員を出向させることで、効率の良い清掃方法を学べ、その経験を自分の職場で共有できるようになる。
動画マニュアルを活用すれば紙のマニュアルで把握できなかった部分も確認でき、指導に割く時間を削減できるだろう。動画マニュアルと聞くと難しいと感じるかもしれないが、スマートフォンを使えば簡単に撮影できるため、作成に挑戦してみるのもおすすめだ。
サポートツールによる効率化方法
サポートツールを活用すれば、より効率的な清掃業務が可能になる。提供されているサービスの種類には、主に以下の3つが挙げられる。
● PMS
● 清掃ロボット
● V-Manage(動画マニュアル・タスク管理)
ここでは、それぞれの詳細を解説する。
PMS
PMS(Property Management System)とは、ホテル管理システムのことを指す。PMSツールには、以下のような機能がある。
● 予約管理
● 顧客管理
● フロント業務支援
● 清掃管理
● 会計
● 分析
ツールにはタブレットやパソコン、客室テレビを使い、リアルタイムで全客室のステータス確認や清掃状況の確認ができるものもあるため、清掃作業の効率化が可能だ。ツールによって搭載されている機能が異なるため、必要なものは何かを洗い出すことが重要になる。
清掃ロボット
清掃ロボットを導入すれば、従業員の清掃業務を軽減できる。人間が清掃を行う場合、ホコリが取り切れずに残ってしまうことがある。掃除ロボットを利用すればムラなく掃除できるだけでなく、歩くことによるホコリの舞い上がりも抑えられる。また、トイレや洗面所などを清掃している間に、掃除ロボットを稼働し床の清掃ができ業務の効率化が可能だ。
掃除ロボットは人件費と比べてコストがかかりにくい点もメリット。昼夜問わず一定のコストで掃除できるため、人手不足に悩んでいる場合は、導入を検討してみるといいだろう。
V-Manage(動画マニュアル・タスク管理)
『V-Manage』とは、宿泊施設や飲食店などのオペレーション管理ツールである。タスク管理、レポート作成、アプリを利用してマニュアル化・管理・報告が可能。タスクを見れば、「いつ」「何を」がすぐに確認できるだけでなく、タスクにマニュアルが紐づけられるため、作業内容も把握できる。
ダッシュボードで実施状況を一目で確認可能。チェックシートでは清掃管理や衛生管理などのチェック項目を自由に作成できるため、ホテル業務の効率化が期待できる。
まとめ
海外の旅行客が増加している現在、人手不足に陥っているホテルは多い傾向にある。そのような状況のなかでサービスの質を維持するためには、業務の効率化が欠かせない。多くの客室を抱えるホテルの清掃作業は、スタッフの時間を割く業務の一つである。清掃プロセスの構築やマニュアル作成だけでなく、PMSや清掃ロボットなどのテクノロジーを導入し、清掃業務の効率化を目指そう。
<参照>
観光庁「宿泊旅行統計調査 (2023年・年間値(速報値))」
帝国データバンク「「旅館・ホテル業界」 動向調査(2023年度見通し)」