弁護士が解説!SNS投稿等によるインターネット上の名誉毀損と対処法

飲食・宿泊2023.09.06

弁護士が解説!SNS投稿等によるインターネット上の名誉毀損と対処法

2023.09.06

虎ノ門カレッジ法律事務所 弁護士 福原 竜一

虎ノ門カレッジ法律事務所 弁護士 福原 竜一

弁護士が解説!SNS投稿等によるインターネット上の名誉毀損と対処法

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目次

I はじめに

近年、SNS(X(旧Twitter)、Instagram、TikTok、YouTubeなど)をはじめとするソーシャルメディアの利用が広がり、個人でも影響力を持った発信をすることが容易になってきました。他方で、インターネット上の名誉棄損の問題は深刻化しています。特に、飲食店との関係では、SNSのほか、各種グルメサイト上で、名誉棄損が成立するような口コミを投稿されてしまうケースが少なくありません。

そこで、本コラムでは、SNS投稿等によるインターネット上の名誉棄損について、民事における名誉毀損の成立要件や、被害に遭ってしまった場合の法的対処(削除請求、発信者情報開示請求、損害賠償請求等)について、食品・飲食業界の裁判例を紹介しつつ、概説します。

II 民事上の名誉毀損の要件

1 名誉毀損とは

そもそも、名誉毀損とはなんでしょうか。
名誉毀損の「名誉」とは、判例上、「人の品性、徳行、名声、信用等の人格的価値について社会から受ける客観的評価」、すなわち外部的名誉をいうとされています(最判昭和61年6月11日昭56(オ)第609号)。そのため、民事上の名誉毀損は、その投稿等が対象者の社会的評価を低下させるものであるといえる場合に、はじめて成立します。

2 社会的評価の低下の有無

対象者の社会的評価を低下させるものであるか否かは、投稿等がされた媒体の一般的な読者の普通の注意と読み方を基準に判断されます(最判昭和31年7月20日昭29(オ)第634号)。

具体的に、どのような投稿等が社会的評価を低下させることになるのでしょうか。事実摘示型と意見・論評型の2つに分けて検討します。

(1)事実摘示型
事実を摘示する方法によるもので、その内容の存否が証拠等によって判断できる場合をいいます。例えば、「あの飲食店は、期限が切れた原材料を利用している」「日本では利用が認められていない食品添加物を使用している」等です。

食品・飲食業界に関する裁判例を紹介します。

東京地判令和4年6月1日令3(ワ)第32960号
投稿内容 「鹿肉の産地偽造 ○○ あゆも中国産」(「○○」は飲食店の店名)
社会的評価の低下の有無
判断の概要 一般の読者の普通の注意と読み方を基準とすれば、同投稿は、同店では産地を偽造した鹿肉や鮎が販売又は提供されているとの事実を示すもので、同店経営者の社会的評価を低下させる。

 

東京地判令和2年2月5日令元(ワ)第29097号
投稿内容 「今日も、賞味期限偽装しました。製造予定表にしっかり指示されております。」
社会的評価の低下の有無
判断の概要 一般の読者の普通の注意と読み方を基準とすれば、同投稿は、同食品製造業者において、製造予定表上の指示に基づき製品の賞味期限が偽装されているとの事実を示すものである。
そして、同投稿は、食品の安全性に係る重要情報につき虚偽表示を行い、購入者を欺いて危険な食品を提供しているとの疑念を抱かせ内容であるから、同食品製造業者の社会的評価を低下させる。

 

(2)意見・論評型
事実ではなく、意見や感想を述べるものです。「あの店の料理はまずい」等が典型例です。
食品・飲食業界に関する裁判例を紹介します。

東京地判令和4年1月28日令3(ワ)第10323号
投稿内容 「肉屋の焼肉屋はダメダメ。良い肉を使えばうまいと思い込んでるからね。調理できていない」、「クソまずい不人気店」
社会的評価の低下の有無
判断の概要 一般の読者において、同投稿は、同店で提供される食事の味等という個人差のある事項について、否定的な意見ないし感想を持つ者がいると理解するのが通常と考えられ、直ちに同店の社会的評価を低下させるとはいえない。


このように、抽象的な感想等については、社会的評価の低下が認められないことが多いといえます。

これに対して、「あの店の料理がマズイのは、料理人の腕が悪く、原材料も鮮度の落ちたものばかりを使っているからだ」などと、意見論評の具体的な根拠として事実を摘示するような場合には、社会的評価の低下が認められる可能性も高まると考えられています。

上記のように、事実摘示型と意見・論評型では、社会的評価の低下が認められやすいか否かについて差異はあるものの、いずれも一般的な読者の普通の注意と読み方を基準に、ケースバイケースで判断していくことになります。

3 「誰の」社会的評価が低下したのか(同定可能性)

名誉毀損の成立には、その投稿等によって「誰の」社会的評価が低下したのかを特定できること(同定可能性)も必要です。

SNS上で、対象者の固有名詞や住所などが明示されている場合のみならず、前後の文脈等から、一般の読者の普通の注意と読み方を基準にして、誰に対する投稿等であるかを推知できる場合にも、その対象者に対する名誉毀損が成立し得ます。

対象とする飲食店を特定せずになされた投稿について、掲示板・スレッドのタイトルや、投稿当時のフランチャイズ出店状況に照らし、同定可能性を認めた裁判例として、以下のものがあります。

東京地判令和元年10月16日令元(ワ)第12199号
投稿内容 (「富山グルメ・飲食」というインターネット上の掲示板の、〇〇という全国的にフランチャイズ展開している飲食チェーン店に関連するスレッドにおいて)
「システム本部のC社長がここのオーナーが指示に従わないので、手を焼いています」
同定可能性の有無
判断の概要 同投稿は、富山県内で○○の店舗を経営する会社を対象とするものと理解できる。そして、投稿当時、富山県内には、原告が運営する店舗以外に○○の店舗は存在しなかった。
そのため、同投稿は原告に向けられたものであると理解できる。

 

4 公然性

次に、議論はあるものの、投稿が公然と行われることも必要と考えられています。「公然」とは、不特定又は多数の人に対して投稿されることを指し、特定かつ少数の人に向けた投稿では、原則としてこの要件を満たしません。

例えば、以下の裁判例のように、特定の第三者に対して電子メールで送信をしたにとどまるような場合には、公然性は否定されます。特定少数人に対して名誉棄損行為をされても、社会的評価が低下するとはいえないと考えられるからです。

東京地判平成21年11月6日平21(レ)第367号
表現態様 知人2名に対し、原告について「社会に適合出来ないネット依存者」「常識に欠ける人間」などとする表現がある電子メールを送信した。
公然性の有無
判断の概要 これらの電子メールは、いずれも特定の知人に対して送信されたものにすぎず、多数の第三者に閲読可能な状態に置かれたものではない。


ただし、特定少数人に対する行為であっても、そこから不特定又は多数の人に伝わる可能性がある場合には、なお公然性の要件が満たされることもありますので、注意が必要です。

下記裁判例では、電子メールの内容等に鑑み、特定の名宛人から不特定又は多数の人へと伝わることが予想されるとして、公然性が肯定されました。

東京高判平成26年7月17日平26(ネ)第798号
表現態様 被告会社の取締役等が、被告会社の元従業員による横領等の事実を、取引先関係者18名に対し、電子メールで個別送信した。
公然性の有無
判断の概要 送信されたメールを個別に見れば特定人に当てられたものであるが、下記事実を考慮すれば、その内容が広く不特定多数の第三者に伝播される可能性があったといえ、公然性が認められる。
・名宛人が18名に及ぶこと
・内容が、当該元従業員が関与している請求に対して注意を促すものであって、その性質上、直接の名宛人以外の関係者にも周知されるべきものであったこと

 

5 SNS投稿の特殊性

「誰が」名誉毀損をしたのかを検討するにあたり、SNSについては、他者の投稿内容を引用するに過ぎない場合(X(旧Twitter)におけるリポスト(旧リツイート)等)や、他者の投稿にリアクション(いいね!等)をするに過ぎない場合でも名誉毀損は成立するかが問題になります。

(1)リポスト(旧Twitterにおけるリツイート)
リポストの場合、リポスト主が誰であるかは表示されますが、元ポスト(旧ツイート)の内容がそのまま表示されるため、一般の読者において、当該内容は元ポスト主による投稿であると考えるのが通常でしょう。

しかし、対象者の名誉を毀損する元ポストの意味内容を変容させることなくリポストをする行為は、リポスト主において、元ポストの内容をそのままの形で、自身のアカウントのフォロワーによる閲覧が可能な状態に置く行為に他ならず(大阪高判令和2年6月23日令元(ネ)第2126号参照)、名誉毀損的な元ポストの内容の拡散と被害の拡大とを招きかねません。

そのため、元ポストの表現の意味内容が、一般の読者の普通の注意と読み方を基準として解釈すれば対象者の社会的評価を低下させるものであると判断される場合、リポスト主が元ポストの表現内容を自身のアカウントのフォロワーの閲読可能な状態に置くということを認識している限り、当該リポストについて不法行為が成立する可能性はあります。

なお、同様の問題は、FacebookやInstagramの「シェア」等でも起きるおそれがありますので、注意が必要です。

(2)いいね!等のリアクション
「いいね!」等のリアクションは、比較的軽い意図で他者の投稿に対する賛同の意思を表示するものに過ぎず、リポスト等と比較して1つの投稿と同視することができるほどの拡散効果は認められないと考えられます。

しかし、発信力のある著名人が、リアクション以前に対象者に対する批判投稿を繰り返すなどしていたことを認定し、「いいね!」を押したことについて不法行為の成立を認めた事案があります(東京高判令和4年10月20日令4(ネ)1922号)。

この事案は特殊な内容で一般化し難いといえますが、「いいね!」であっても、個別事情次第では、不法行為が成立する可能性はあるという点に注意が必要でしょう。

6 例外的に名誉毀損が成立しない場合

相手方の社会的評価を低下させるような投稿であっても、その違法性を阻却する事由が認められる場合には、例外的に名誉棄損が成立しません。この違法性を阻却する事由の判断枠組みは、事実摘示型と意見・論評型で異なります。

(1)事実摘示型
判例は、事実の摘示が公共の利害に関する事実に係り(①)、専ら公益を図る目的でなされた場合であって(②)、当該事実が重要な部分について真実であると証明されたとき(③)、当該行為の違法性が否定されるとしています(真実性の法理。最判昭和41年6月23日昭37(オ)第815号)。

また、真実性の証明がなされない場合(③を充たさない場合)でも、当該事実が真実であると信じたことにつき相当な理由が認められる場合(④)には、故意又は過失が否定されます(相当性の法理)。

① 事実の摘示が公共の利害に関する事実に係ること
一般市民が関心を寄せることが正当と認められるような事項に関係した内容であることを意味します。例えば、飲食店やその経営者に向けられた投稿であっても、当該店舗又は経営者の社会的影響力や社会的活動等を考慮して、公共の利害に関する事実と評価される場合があります。

下記裁判例では、近しい者同士のトラブルに留まると判断し、公共の利害に関する事実に係るものとは認められませんでした。

東京地判令和3年10月27日令2(ワ)第8539号
事案の概要 原告が店長を務める飲食店で勤務していた店員の妹(被告)が、インスタグラムの自身のアカウント上に、姉が同店において給料や給料明細をきちんともらえていない旨の事実を摘示する投稿をした。
判断の概要 被告の姉が、原告との個人的繋がりから、原告と2人で協力して同店の営業を行っていたことに鑑みると、一般的労使関係の下での賃金問題というより、ごく近しい者同士のトラブルであって、摘示された事実に不特定多数人が関心を寄せることが相当であるとはいえない。
よって、摘示された事実は、公共の利害に関する事実とは認められない。


これに対して、下記裁判例は、インターネット上の投稿ではなく、文書の送付による名誉毀損の事案ですが、食品関連会社の代表取締役の社会的評価を低下させるような事実の摘示が、公共の利害に関する事実に係るものと認められました。

東京地判平成30年4月25日平28(ワ)第24691号
事案の概要 食品関連上場会社の元取締役が、同社の代表取締役について、経営能力が十分ではなくコンプライアンス意識や倫理観のない人物であるとの印象を抱かせるような事実の摘示等を内容とする文書を、証券取引等監視委員会等に対して送付した。
判断の概要 下記の点に照らせば、同文書の送付が公共の利害に関する事実に係るものであることは明らかである。
・同社は当時上場会社であって、多数の一般株主を有していたこと
・同文書は、広く一般消費者の用に供せられる食料品の供給会社である同社の事業運営上の問題点やコンプライアンス上の問題点を指摘するものであること


② 事実の摘示が専ら公益を図る目的でなされたこと
広く一般に、又は一定の組織内で認知を図るべき正当な目的であることを意味します。摘示した事実に公共性(①)が認められるような場合であれば、それを周知させる行為に公益目的があると認定される可能性は高いでしょう。

「専ら」とはありますが、公益目的以外の目的が併存する場合でも、主たる目的が公益を図ることであれば、②に該当すると考えられています(東京地判平成24年11月8日平成24(ワ)第6887号)。

ただし、前後の文脈や表現の悪質性から、公益目的が否定された裁判例もあります。

東京地判令和2年10月12日令元(ワ)第35692号
事案の概要 原告会社が運営するラーメン店で提供されるラーメンにつき、インターネット上の掲示板に「サルモネラー麺ゲリラー麺あります。」と投稿された。
判断の概要 食中毒の原因菌であるサルモネラ属菌を指す「サルモネラ」と本件ラーメン店が提供する食品であるラーメンとを組み合わせた表現と、食中毒の症状である下痢を指す「ゲリ」とラーメンとを組みわせた表現からなるものと読み取ることができ、原告が運営するラーメン店でサルモネラ属菌による食中毒を発生させたことがあるとの事実を摘示するものと認められる。
同ラーメン店は、サルモネラ属菌による食中毒により営業停止処分を受けたことがあり、摘示された事実が反真実であるとはいえないが、同投稿の前後の投稿が、同ラーメン店が掲げるキャッチコピーを批判・揶揄するものであることや、同投稿が造語からなるものであり、しかも食中毒の発生原因や症状を組み合わせてあえて悪質な表現を用いていることから、揶揄や誹謗中傷する目的でされたもので、公益目的によるものではないと認められる。

 

③ 摘示された事実が重要な部分について真実であると証明されたこと
重要な部分であるか否かについても、社会的評価の低下の有無と同様、一般の読者の普通の注意と読み方を基準に判断されます。

④ 摘示された事実が真実であると信じたことにつき相当の理由が認められること
真実性の証明がなされない場合(③を充たさない場合)でも、当該事実が真実であると信じたことにつき相当な理由が認められる場合には、違法性が否定されます。なお、この「相当の理由」が認められるためには、行為者において、行為時に存在した確実な資料・根拠に基づき、摘示された事実が真実であると信じたことが必要です。

(2)意見・論評型
特定の事実を前提とした意見ないし論評について、判例は、それが公共の利害に関する事実に係り(①)、専ら公益を図る目的でなされたものであって(②)、当該前提事実が重要な部分について真実であることの証明がなされた場合には(③)、人身攻撃に及ぶなど意見ないし論評としての域を逸脱したものでない限り(④)、当該行為の違法性が否定されるとしています(公正な論評の法理。最判平成9年9月9日平6(オ)第978号)。

また、真実性の証明がなされない場合(③を充たさない場合)でも、当該前提事実が真実であると信じたことにつき相当な理由が認められる場合には(⑤)、故意又は過失が否定されます。

以下では、④のみを検討します。

④ 人身攻撃に及ぶなど意見ないし論評としての域を逸脱したものでないこと
単なる批判・不満といった意見・論評にとどまらず、名誉毀損的な投稿が執拗に行われていたり、ある投稿が相手方を強度に揶揄・愚弄・嘲笑・蔑視するような表現態様であったりするような場合に、意見・論評としての域を逸脱していると判断されると考えられています。

次の裁判例は、「Googleマップ」の口コミ情報に関する裁判例です。口コミ情報は、公共性・公益性に鑑み、投稿者の主観的な批判・不満といった意見ないし論評にとどまる限りは名誉棄損の不法行為にはあたらないとして、以下のように判断しました。

東京地判令和3年1月19日令2(ワ)第23650号
事案の概要 車えびの養殖販売事業等を営む会社につき、「不衛生で従業員の態度も悪く底辺な残念な印象を受けました。食品を扱うなら、もう少し衛生面に気を配って欲しい。」との口コミが投稿された。
判断の概要 「底辺」との表現はやや強いが、「不衛生」「残念」「印象」等の表現全体を見れば、同投稿の内容は投稿者における主観的な批判・不満に留まり、人身攻撃に及ぶなど意見ないし論評の域を逸脱しているとはいえない(※)。
※ 本事案は、多数の取引先や顧客を相手にする商売において、そのサービスや価格、対応等に不満を持つ者がいることは自然であり、投稿内容による社会的評価の低下には疑義があるとしつつ、違法性阻却事由について判断した事案。

 

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