客を呼び、絆を深めるクラウドファンディングのメリット
クラウドファンディングとは、インターネットを通じて不特定多数の支援者から少額ずつ資金を集める方法で、日本では2011年の東日本大震災を機に広まった。クラウドファンディング事業者のプラットフォームを使うため、支援を受ける側もする側も難しい手続きは必要ない。支援内容の掲載や決済などの手続きがオンライン上で完結できることで、挑戦のハードルは下がっている。
国内では「購入型」と呼ばれる形式のクラウドファンディングが一般的だ。実行者がプロジェクト(クラウドファンディングの案件)をWeb上に公開し、賛同する支援者からお金を集める。プロジェクトが完了したら、支援者に金銭以外のモノやサービスを、リターンとして提供する流れだ。企業の新商品開発から夢を叶えたい個人まで、幅広い層がクラウドファンディングに挑戦している。
購入型クラウドファンディングのしくみ
飲食店がクラウドファンディングに挑戦するメリットでまず思い浮かぶのは、資金調達だろう。持続化給付金をはじめとする各種助成金の申請や、テイクアウト、デリバリー事業といった対策だけではまかなえない運転資金を調達したいのは、どの経営者にも共通した思いだ。ただ、他の飲食店がやっているからと同じようなプロジェクトを立ち上げても差別化は図れず、目標額が得られるかどうかもわからない。
緊急事態宣言以降、飲食店のクラウドファンディング案件は乱立気味だ。その中であえてプロジェクトを起案するなら、資金調達という短期的なメリットだけでなく、中長期的な顧客との関係性の構築、ファンの可視化を重視したい。
消費者は来店することができなくても、自分の好きな飲食店を応援したいという気持ちを持っている。クラウドファンディングを通して支援することで、店舗と顧客の絆はぐっと深まるだろう。プロジェクトを常連客らがSNSなどでシェア、拡散してくれることで、客が客を呼ぶ状態も生まれやすい。
クラウドファンディングの選び方
主なクラウドファンディングサービス
クラウドファンディングを運営するサイトはいくつかあり、それぞれ特性や手数料が異なる。代表的なサービスを以下に掲げる。
サービス | 特徴 |
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CAMPFIRE(キャンプファイア) | 飲食店舗・宿泊施設などで手数料12%→0とする新型コロナウイルスサポートプログラム実施中(2020年7月31日エントリー分まで)。 |
READYFOR(レディーフォー) | 国内クラウドファンディング・プラットフォームの先駆け。コンサルタントのサポートを受けた場合の目標金額達成率は75%で、業界最高水準。 |
Makuake(マクアケ) | 国内の飲食店ジャンルのプロジェクトで最も高額な資金調達額を達成(2018年3月、3672万円) |
どのサービスも、マニュアルが用意され必要事項を画面上に入力していけばプロジェクトページが作成できるが、すぐに公開できるわけではない。掲載されるまでは審査があり、内容によっては差し戻される場合もあるので、公開予定日などがある場合は余裕をもった日程での申請が望ましい。
募集方式
購入型クラウドファンディングの募集には、「All or Nothing方式」と「All In方式」という2種類のやり方がある。飲食店が支援金を得るために挑戦する場合は、目標金額に関わらず集まった金額が受け取れるAll In方式で実施するのが一般的だ。
All or Nothing方式 | 募集期間内で目標金額に達しないとプロジェクトは不成立となる。支援者に支払いは発生せず、リターンもない。 |
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All In方式 | 目標金額に届かない場合でも1人でも支援者がいれば集まったお金を受け取れる(手数料を除く)。ただし、思ったほどお金が集まっていない状態でもリターンは発生する。 |
成功のポイントは、「この店だから応援したい」という共感集め
クラウドファンディングは、ITに不慣れだと何やら大がかりで、小さな店がやることではないと思うかもしれない。だが、大手チェーン店よりも店舗と顧客一人ひとりの距離が近く、コミュニティができあがっているような個店のほうが、強みを発揮できる手段のひとつともいえる。以下に、外食企業が実施したプロジェクトの支援額の事例を掲載する。
※プロジェクトの支援募集は終了しています。
それでは、クラウドファンディングに挑戦する際のポイントをいくつか見ていこう。
プロジェクト文章・画像のポイント
タイトルとメインの画像はSNSでシェアする際、プロジェクトの顔となる大事な部分だ。目立つことよりも伝わるかどうかに重きを置こう。また、リターンの設定とプロジェクト本文の内容は成功を左右する。多くの飲食店がプロジェクトに挑戦しているので、多くの支援を集めている事例を参考にしてほしい。
とはいえ、ありがちなリターン、どこかで見たような本文では店舗の情熱は伝えられない。クラウドファンディングの背景は、1店舗1店舗違うはずだ。
・なぜやろうと思ったのか
・何を実現したいのか
・集めた資金を具体的にどう使うのか
・どんなリターンがあるのか
つたなくても他の人には書けない自分自身の言葉こそが、読む人の心を動かす。短すぎると説明不足だが、長々書いても途中で読まれなくなってしまう。あなたの店のことを知らない人に話しかけるつもりで簡潔さを心がけよう。店の特徴やリターンはビジュアルを交えて説明したい。動画編集ができるなら、簡単にまとめた動画も支援者の参考になるだろう。
また、書き上げたあとは、スタッフや家族・友人などに読んでもらい、わかりづらいところがないか忌憚のない意見でチェックをもらおう。
支援者の募集
クラウドファンディングはプロジェクトを立ち上げただけで支援者が集まってくるわけではない。支援はプロジェクト公開直後のスタートダッシュと終了日近くの追い込みで伸びる傾向にあるという。募集期間中はこまめにSNSへの情報発信や、途中経過などの活動報告を行い、目標金額に向けたロードマップを描いていこう。
新型コロナウイルスの影響は長期に及ぶ。「新しい生活様式」といわれるように、既存の社会基盤自体が大きく変わり、これまでの運営方法では通用しない世界になるかもしれない。だが、業態や営業形態が変わっても、飲食店は顧客から愛され続けることでしか成立しない。クラウドファンディングへの挑戦は、晴れて何の心配もなく完全な形での営業再開となった時、支援者と笑顔で会える何よりの励みを生むだろう。