飲食店経営に必要なFLコストとは?業態ごとの適正比率と削減方法を解説

飲食・宿泊2019.09.13更新:2023.06.22

飲食店経営に必要なFLコストとは?業態ごとの適正比率と削減方法を解説

2019.09.13更新:2023.06.22

飲食店経営に必要なFLコストとは?業態ごとの適正比率と削減方法を解説

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飲食業は競争の激しい業界だ。開業3年で7割前後が廃業し、10年続くのは1割程度とも言われている。経営を存続させるためには、コスト管理を意識することが必須となる。

コスト管理において、考慮すべき重要な指標が「FLコスト」だ。本記事ではFLコスト比率の計算方法、各業態の適正値と削減方法について解説する。

目次

FLコストとは? 見た目だけの繁盛店にならないために

FLコストとは食材原価と人件費であり、FLコスト比率は売上高に占めるFLコストの比率である。「F」はFoodで原価、材料費を示し、「L」はLabor(労働)で人件費を示す。売上から経費を引いたものが営業利益であるが、その経費の多くを占めるのがFLコストである。

そのため、どれだけ売上があっても、FLコストが高すぎると利益は出せない。

FLコスト、FLコスト比率の計算式

それぞれのコストを算出する計算式が以下である。

FLコスト=食材原価+人件費

 

FLコスト比率(%)=(食材原価+人件費)÷売上×100

 

計算の結果、営業利益が手元に残らないとなった場合、一体どうしたらいいのだろうか。飲食店が取るべき方法は、大きく4つある。

(1)料理の価格を適正まで引き上げ、売上高をアップさせる。
(2)売上高を維持し、経費の大半を占めるFLコストを圧縮する。
(3)仕入れを見直し、食材原価をおさえる。
(4)調理オペレーションを改善し、人件費をおさえる。

基本的に考え方はすべて同じといえる。どれもFLコスト比率を適正にすることで営業利益を出すことに他ならないからだ。

適正なFLコスト比率とは?30%+30%=60%

それでは、適正なFLコスト比率はどの程度か。一般的にはF、Lともに30%ずつの合計60%が目安とされる。月商500万円程度の飲食店の場合、材料費150万円、人件費150万円、残る200万円で家賃や光熱費などの経費を支払えば、営業利益が7~8%(35万円~40万円)出るといわれる。

55%以下なら優良店、65%を超えると危険水域

もっとも、実際に小規模な飲食店経営者に聞くと「60%では自分の働いた分が出ない。それ以下に抑えないとやっていけない」という声が多い。そうした声を含め、FLコスト比率が55%以下なら優良店、65%を超えると危険水域となり、60%未満に抑えるのが重要な経営戦略となる。

FLコスト削減方法

ドリンク

例えば食材原価でもドリンクではなく食べ物であれば、それを加工する必要があるから、人件費を含む経費がかかる。一方でドリンク類は加工がほとんど必要ないことから人件費はあまりかからない。食材原価の中でドリンクの比率が高ければ、より営業利益が生み出されるということになる。

さらにドリンクの中でもビールよりもウイスキーや焼酎の方が、原価は低い。生ビールは保存期間が短く、また、泡が多くなればその分は廃棄しなければならないため、食材ロスが多いからだ。生ビールであれば、季節に合わせた消費量を過去のデータから予測し、廃棄しないで済むレベルの量を仕入れることも必要になる。

仕入・人件費

食材廃棄を防ぐために予定量ギリギリに仕入れ、仮に売り切れたとしてもお客が別の物を注文できるぐらいの品揃えをすることも重要であろう。

なお、肉や魚には料理に使えない骨・脂身などが含まれている。食材として使える部分の割合(歩留まり)を計算することで、よりフードコスト算出の精度はあがる。

また系列店の場合、一括して大量に仕入れて原価を下げる「スケールメリット」を利用する方法も有効である。

人件費もムダの見直しは必要だ。客がいない時でも従業員には賃金が発生する。曜日や天候など、過去のデータを参考に正確な来店予想を立て、適正人員となるようシフトの見直し、オペレーションの簡略化などを行う必要がある。

FLRコスト比率とは? RはRent(家賃)

なお、FLだけでなく「R(Rent:賃料)」を加えたFLRコストも重要な指標とされる。駅前の一等地に店舗を出す場合、賃料はかなりの高額になる。場合によっては、FLコストを除いた経費+営業利益のほとんどを賃料が占めてしまう事もある。一般的に、売上に対するFLRコスト比率は70%未満にするのが良いとされる。

FLRコスト比率(%)=(食材原価+人件費+賃料)÷ 売上×100

 

業態や店舗によって異なるFとLの比率とその仕組み

FLコストはF・Lともに30%程度が一般的な目安と書いたが、個々の店舗の状況によって異なる。人件費は従業員の熟練度、経験に左右される。

一流の料亭や、高級食材を調理して提供するにはそれなりの料理人の腕が必要で、手厚い接客も求められる。つまり、高いスキルと接客意識を持った従業員を集める必要があるので人件費の比率はおのずと高くなる。

逆にハンバーガーショップのように、従業員にアルバイトスタッフが多い場合、接客もマニュアル化されており、人件費より食材原価の占める比率が高くなる。

焼き肉、居酒屋など、業態で微妙に異なるFLコスト

FLコストと一口に言っても、業態によって適切な比率は変わってくる。ここでは、業態ごとのFLコスト比率の例を紹介する。自店舗の業態に合わせて参考にしていただきたい。

業態ごとFLコストの標準値(例)

業態  F(フード) L(人件費)
焼き肉 40% 20%
ラーメン 3035% 2530%
居酒屋 2835% 2532%
ファストフード 40% 20%
レストラン 3135% 2729%
カフェ 2435% 2536%


たとえば持ち帰りの弁当店ではF40%:L20%、通常のレストランではF33%:L27%程度が一般的といわれる。業態によってFが25~45%、Lが15~35%の幅で、自分が目指す店舗の特性に合わせ、60%未満を目指すべきであろう。

飲食店のFLコスト管理のまとめ

①経費の多くを占めるFLコストの管理が、飲食店経営を左右する
②FとLの比率は業態によって異なるものの、計60%未満に抑えるのが一般的
③R(家賃)も含めたFLRコスト比率は70%未満に抑えるのが望ましい
④仕入の工夫やオペレーションの見直しでFLコストは圧縮できる

営業利益を増そうと数字だけで安易にFLコストの削減や価格改訂(値上げ)を行うと、売上減少に直結する。まずは店舗の状況に見合う適正なFLコスト比率を知ることだ。そして、実際の数値が上ぶれているようであれば、圧縮できる経費はないか、経営にムダがないかを点検し、改善していくことが重要である。

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