拡大を続ける巨大市場
2018年、日本を訪れた外国人観光客は3100万人を突破した。20年の東京オリンピック・パラリンピックや25年の大阪・関西万博開催、アジア圏の経済発展などを背景に、今後もさらなる増加が見込まれる。政府は観光立国化をめざして、20年の外国人観光客を4000万人、30年には6000万人に増やす目標を掲げている。
インバウンドの観光市場は、20年に8兆円に上るといわれる。そのうち飲食が占めるのは約15~20%。単純計算で、およそ1兆2000億円以上のマーケットだ。日本の外食産業で1兆円を超える単一業種の市場といえば、居酒屋、寿司、喫茶などであり、インバウンドの市場規模がいかに巨大かイメージできるだろう。 さらに30年に見込まれている15兆円の観光市場では、飲食のインバウンド市場規模は2兆円を超えてくる。
外食企業の事業拡大に インバウンド対策は必須
これまでインバウンド対策を講じてこなかった飲食店も、何らかの取り組みをすべき時期にさしかかっている。すでにインバウンド対策をとったことで、売上が従来の2倍以上になったという飲食店も多く出てきている。
実は、飲食店におけるインバウンド対策では、いくつかのポイントを押さえることで、外国人の顧客満足度を高め、集客につなげることができるのだ。
集客対応 | ●ネット予約サイト、ポータルサイト、検索サイトの活用 ●旅行雑誌・海外サイトへの広告掲載 ●海外で使用されているSNSでの情報発信 ●近隣ホテル・外国人観光案内所への営業、クーポン付きチラシの作成 ●店頭看板の多言語化の実施 |
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予約対応 | ●ネット予約サイトの多言語対応、顧客台帳の管理 |
接客対応 | ●外国人用接客シートの活用、従業員の外国語教育 |
注文対応 | ●メニューブック、食べ方・こだわりの多言語対応 |
決済対応 | ●キャッシュレスに対応した電子決済端末の導入 |
クチコミ対応 | ●クチコミ先の媒体登録、コメント返信 |
インバウンド市場は成長とともに変化もする。今後は、初めて日本を訪れる外国人観光客に加え、2回目、3回目というリピート客が一層増加すると見込まれる。
また、団体旅行から個人旅行へのシフトや、これまでは訪日外客数が少なかった国や地域からの、新たな外国人観光客も増えている。インバウンド対策とは、「メニューを翻訳した」「クチコミされやすい料理を作った」「キャッシュレス決済を導入した」といった点だけの対応ではない。
大切なのは、国内客と同様に、効果的に集客し、リピート率を上げる戦略を立てることだ。このような変化に継続的に対応するには、インバウンド対策を追求し続ける専任者を置くことが重要だ。その上で実際に何をすべきか。次から具体的な対策方法を見ていきたい。