プチッと開けるポーション容器に込められた思い
『プチッと鍋』がヒットした要因は、個食化への対応だけではなく、簡便で目新しいポーション容器を採用したことが大きい。この発想は、社内でのグループワークにより生まれたという。
「個食の鍋つゆを作ろうというコンセプトは決まったものの、容器の選定には悩んでいました。小袋やスティックタイプも検討したのですが、売り場に置いたときに目新しさがあり、なおかつ消費者が使いやすいという理由で、ポーション容器に目をつけました。
ガムシロップやコーヒーのミルクとして馴染みのある容器だったので、『いつかこの容器に調味料を入れたい』という思いが前々からあったのです」
使い勝手だけでなく、見た目の可愛らしさも重視してポーション容器に落ち着いたという。一方で、中身となるスープの品質作りには苦労した。
「当社は創業当時から業務用調味料を取り扱っていたこともあり、高い濃度の原料をブレンドする技術には長けています。ただ、あれだけ小さな容器に高濃度の調味料を入れたことはなかったので、品質作りを担当した研究所には苦労をかけました。一般的に高濃度の液体には砂糖や塩などの固形原料は溶けづらく、一度溶けても時間がたつと結晶化してしまうことがあります」
ポーションの中で結晶化が起こると、消費者に異物が混入していると思われ、味のバランスもくずれてしまう。中身を結晶化させないと同時に、ポーション容器からサラッと出せる粘度に調整することも重要だった。
「蓋を開けると中が全部見えるため、きれいに出し切れないと不満を持たれてしまいます。中身の濃度は高めないといけないのに、ゆるやかな物性にしないといけない。相反することを実現させる必要があり、品質作りには大変苦労しました」
エバラ食品の濃縮鍋つゆは3倍希釈だが、『プチッと鍋』の希釈濃度は8.5倍。1人分のポーション容器20mlのサイズと、具材の野菜から出る水分も計算したうえで、結晶化しないギリギリの濃度とした。
鍋以外の活用法が広がり、シーズン商品から年間商品へ
こうした苦労の末、個食に対応した『プチッと鍋』は発売された。鍋つゆ調味料は3~4人分の商品が多いなか、『プチッと鍋』は1袋6個入りとした。一般の分量より多くしたことにも理由があるという。
「雑炊やラーメンで鍋のシメをしたいときにスープが足りなくなることがありますよね。シメを楽しむために、あれこれと自宅にある調味料を足してなんとかスープを増やしているという声もあったので、家族で鍋を食べた後でもシメを十分楽しめるよう、6個入りに設定にしました」
また、家族で食事を囲むとき、子どもと大人では味の好みが分かれることが多い。「大人は辛くて濃厚な鍋を食べたくても、子どもの好みに合わせた鍋を食べるしかない」という不満も、個食の鍋つゆにすることで解決できた。
『プチッと鍋』の発売後、パッケージの裏面や公式ホームページで鍋以外の料理にも使える汎用メニューを公開したことで、小売店での販売時期にも変化が出た。