ムスリムが安心して口にできるすし酢
世界人口の約3分の1、約20億人にのぼるといわれるムスリムは、地域別にみるとインドネシアやマレーシアといった、東南アジア諸国に多い。近年経済成長の著しいこれらの国々から観光目的で訪日するムスリムも、年々増加している。だが、宗教上の理由で食べ物に制限が多く、日本に来たのに和食を食べることが難しい場合がある。すし酢もその理由のひとつだ。
食酢は、製造工程でアルコールを発酵させる。また、品質保持のためにもアルコールを添加することがある。そのため、アルコール摂取の禁忌を厳しく守っているムスリムは、一般の酢を口にすることができないのだ。
和泉は、もともとハラル対応食品の需要の高さを見込み、東南アジアに出店している日本料理店向けに開発された。イスラム教の戒律で許されているという意味の「ハラル」認証を受けたタイの工場で製造されており、使用原料もすべてハラル認証を取得している。
その味は、タマノイ酢の大阪支店海外事業部 丸山鉄平氏によると、かなり甘いのが特徴だという。
「ムスリムの多い東南アジア地域の食事は、日本に比べて味が濃い傾向にあります。出汁のうまみなどよりも、辛さや甘みがはっきりしている方が好まれるのです。社員がタイの回転寿司チェーン店に行った際、味が日本の寿司と比べて極端に甘いと気づき、製品開発に活かしました」
タイを製造拠点とする理由に、すし酢の原材料のひとつである砂糖が手に入りやすいこともあげられる。
「日本国内で同じ量の砂糖を使ってこの商品を作ったら、とんでもない価格になってしまいます。シロップなどのランクを下げた材料を混ぜなければならないでしょう。タイなら砂糖100%を贅沢に使えるため雑味がなく、甘くてもすっと抜けて舌に残らない、質の良いすし酢を作ることができるんです」
砂糖がしっかり入っているので、酢の物用の三杯酢としても活用できる。