この戦略には、アイデアの具現化はもちろん、達成感を通じて若手を成長させようという意味も込められている。
若手のやる気と責任を育む“言える化”
しかし、ただひとりに任せっきりというわけではない。そこには若手のやる気を引き出し、またサポートする体制がある。
「新商品の企画は、月2回の経営会議での承認が必要です。また、弊社には委員会とプロジェクトという制度があります。委員会は、5S(整理、整頓、清掃、清潔、躾)委員会やPR委員会といった、商品とは直結しないけれども業務上で必要なことについて話し合う場です。プロジェクトは商品と直結していて、例えばガリガリ君プロジェクトなら、ガリガリ君の今後の味をどう決めていくかを議論します。それぞれに、各部署の担当として若手も出席します」(新井氏)
委員会やプロジェクトの場が、若手の育成に果たす役割は大きいという。
「ガリガリ君プロジェクトでは、開発担当、営業担当、製造担当、さらに外部のデザイナーなども含めた10~12人で、どんな商品を作っていくかを話し合います。それによって、開発担当者ひとりの思い込みではなく、客観的な視点や考え方を取り入れながら実際に商品化するところまでを考えられるのです」(岡本氏)
そんな場において、若手の“言える化”がうまく醸成されているそうだ。
「様々な部署と意見交換する場で、若手は他部署の先輩に揉まれます。一方で、部の代表として責任を負っていますから、自らの意見や部の考え方を他部署に伝えなければなりません。それが、若手の“言える化”に繋がり、コミュニケーションを通して若手に責任感ややる気が生まれていくのです」(新井氏)
しかし、その場には若手に緊張を強いる雰囲気はないという。むしろ外部の出席者からは“ノリがいい”とまで言われるそうだ。若手の目には、“言える化”はどのように映っているのだろうか?
「プロジェクトのリーダーは部長クラスの管理職が担当するのですが、若手のアイデアを取り入れようとしてくれていることを感じます。また、リーダーや上司から“ああしろ、こうしろ”と細かく言われることがないので、何かやってやろうという気持ちになるんです。つまり、単なる作業者にならない環境があるように思います」(岡本氏)
「ガリガリ君」のあり方を考え直すきっかけとなった、消費者のひと言
若手に対し、責任感と同時に仕事の裁量も持たせるという同社独自の環境。岡本氏は、「ガリガリ君リッチ コーンポタージュ」の開発経緯をこう振り返る。
「当時のガリガリ君は、ロングセラーブランドとして売り上げが伸びていました。正直、失敗したらマズイという思いもあり、安定して売れるフレーバーをメインに作っていたのです」