メディアに出ないというスタンスが、商品寿命を長くする
こうして2000年1月から販売開始した『グーテ・デ・ロワ』だが、当初は苦戦を強いられた。催事などに出店しても、メディアに取り上げられた隣の店は長蛇の列なのに、こちらは閑古鳥が鳴いているという状態。通信販売の電話は鳴らず、インターネットからの注文が1日に1件ということもあったという。しかし、その年の11月頃から売上が急に伸び始めた。
「当社はメディアにも露出してこなかったですし、現在のようなSNSもありませんから、完全にクチコミだけで広まってきました。自分が食べてみて美味しいと感動したものは、自分が大切に思う人にも共有したい。『感動のコミュニケーション』です。これは、お菓子だからできたことでもあります。レストランでどんなに美味しいお料理を食べてもそこに行かなければその感動を味わえませんが、お菓子はひとり歩きしてくれますから」
また、メディアに露出をしなかったことが、商品の価値を上げることに功を奏したと原田氏は振り返る。
「メディアに紹介されたとしても、商品の供給が完全に間に合わなくなることは目に見えていました。それに、メディアに取り上げられた結果の人気の場合、その需要に合わせて増産してもブームが去った後で必ずしわ寄せがきます。商品には適正規模というものがあり、一度にたくさん流通してしまえば寿命が短くなってしまうだけなんですね。でも、私たちはクチコミのお客様に背中を押していただいているような気持ちでしたから、ブームが去る恐さがなかったんです。だから、需要を満たそうと無謀にも見える設備投資も行ってきましたが、それを恐いと思ったことはありませんでした」
無理に広げないことから生まれる、ブランドの価値
『グーテ・デ・ロワ』の売上は2011年までに200倍と飛躍的な成長を遂げていった。転機となったのは2007年だ。その年の4月に、東京都内で店舗をオープンしている。
「東京都内への出店が大きな起爆剤になっています。出店当初はそこそこの売上でしたが、12月のギフトシーズンを前に爆発的に売れるようになりました」