「お箸でつまめる大きさと、キューちゃんらしいパリポリ感という条件を満たす切断形状を規定し、専用の切断機を導入しました。また、調味液はキューちゃんと共通にすると粒が小さい分どうしても味が濃く感じられるので、醤油の量をやや少なくしてあります。その分、国産生姜の配合量を増やして爽やかな風味をアップさせ、料理で使いやすいように調味液に少し粘りをつけました」(長野さん)
ヒットしたブランドを安易に活用するだけでは、真のヒット商品は作れない――。半世紀にわたるキューちゃんの開発エピソードには、そんな教訓が詰まっている。
古臭さを感じさせない巧みなPR展開で、消費者の需要を喚起
キューちゃんがロングセラーとして常に漬物界をリードし続けている理由は、進化する商品そのものの魅力だけに留まらない。テレビCMやキャンペーンなどを通じた、常に新しいキューちゃんを発信するPR展開も実に巧みだ。
発売開始から1年後に初めてテレビCMを打った同社がキャラクターとして白羽の矢を立てたのは、商品名と同じ「キューちゃん」の愛称で大人気だった故・坂本九氏。当時の国民的スターをCMに起用し、キューちゃんという名の漬物を一気に全国へ知らしめたのだ。
「大スターである坂本九さんを使ったCMの広告費は、それまでの全社売上の20%にも上ったそうです。当時の社長も、『清水の舞台から飛び降りる思いだった』と後に語っています(笑)」(吉澤さん)
それ以降、時代ごとに旬の有名人を起用したテレビCMを展開。1989年にはトレンディ俳優として人気の風間トオルで、漬物離れが進む若い世代の需要を喚起し売上を伸ばした。その後も、角田信朗、川口能活、山口もえ、クルム伊達公子、三浦知良と、その時々のターゲット層にアプローチを続けてきた。今年2月からはスキージャンプの高梨沙羅のフレッシュなイメージで、キューちゃんを知らない世代の掘り起こしを図っている。
また、テレビCMに加え、年2回行っているキャンペーンについても、リニューアルした新商品の告知はもちろんだがキューちゃんという商品を過去のものにしたくないという思いが込められている。
50年にわたって売れ続けるロングセラーは、長年親しまれているベテランなのに古臭さを感じさせることなく輝きを放つバリバリの現役なのだ。
発売以来半世紀、革新的なアイデアから生まれ数々のメンテナンスを繰り返しながらロングセラーの道をひた走ってきた「きゅうりのキューちゃん」。寄せられる期待と信頼を裏切ることなく走り続けるその姿は、持久力と瞬発力を状況に応じて巧みに使い分けるアスリートのようにも見える。
東海漬物株式会社
住所:〒440-8530 愛知県豊橋市駅前大通2-28(本社)
〒441-8142 愛知県豊橋市向草間町字向郷78-1(漬物機能研究所)
電話:0532-51-6101(本社) 0532-45-8668(漬物機能研究所)
事業内容:包装漬物を主体とした製造・販売
公式HP:http://www.kyuchan.co.jp/
お話:常務取締役/漬物機能研究所所長 吉澤一幸さん、商品開発グループ グループ長 坂本賢一さん、主任 長野雄平さん