-●まずは御社のあゆみをお聞かせください。
弊社の歴史は今から約80年前、創業者の野村太三郎が京都の錦市場でひらいたおばんざい店に始まりました。当時は小さな軒先で手作りのおばんざい(惣菜)を地元の方向けに販売していたと聞いています。それまで家庭料理であるおばんざいを「作って売る」ということはなかったため、野村佃煮の名は瞬く間に話題になり、翌年には京都駅前にあった丸物百貨店にも出店しております。
その後もおかげさまで順調に店舗・事業を拡大し、現在は京都を代表する佃煮屋として北海道から沖縄まで全国のお得意先とお取引させていただいております。
-●商品ラインナップを教えてください。
ジャンルとしては、惣菜(おばんざい)、佃煮、煮豆で、創業時からほとんど変わっておりません。ただ、弊社は幅広いお取引先の様々なシーンに応じて商品を提案していくことを大切にしていますので、品数・種類はたくさん取り揃えております。京都の老舗と聞くと“高い”というイメージがあるかもしれませんが、安いのもあれば高いものもあり、小売用や業務用、普段使いから贈答用まで、様々な価格帯の商品をご用意しております。
-●どういった取引先が多いですか?
量販店様、問屋様、飲食店様、介護施設様など、多種多様な業態の企業様とお取引させていただいております。飲食店様の中でも、居酒屋、日本料理店、旅館・ホテルなど、商品の価格帯にあわせてお取引先も様々です。
-●商品づくりのこだわりをうかがえますか。
やはり弊社の原点は、京料理にあるということです。素材そのもののうまみをいかしながら、山のもの、海のものをとりあわせ、「味」「色」「形」「香り」「歯ざわり」が生きている。そうした京料理の真髄を、商品開発ではいつも心がけています。
実際の製造現場でも、“味職人”ともいえる工場スタッフにより、素材にあった調味方法で味をうまくしみ込ませ、また素材の風味が損なわれないよう微妙な手加減・さじ加減で、時間と手間をかけて味のバランスを整えています。
-●京料理は薄味というイメージがあります。
京都は昔から公家の世の中で農民や肉体労働者が少なかったため、極端に甘く、塩辛くは味付けをしなかったという背景があるそうです。実際はお出汁がしっかり効いているので、そんなに薄味ではないのですけどね。
また、京料理といえば繊細で美しく“贅沢なもの”というイメージもあるかもしれませんが、おばんざいは昔から京都の一般家庭で食されてきた、いわば“庶民の味”のようなものです。このことから弊社では、「全体的に薄味だけれど、味の骨格はしっかりしていて、毎日食べても飽きない味」を目指しています。ここがブレないことで地元の方に支持され、「本場の味」として全国へと広めることができたのではないかと思っています。
-●実際にこれまでにたくさんの賞を受賞されていますね。
ええ、現在人気の商品で言いますと、平成元年には「ちりめん山椒」が第38回全国水産加工たべもの展で農林水産大臣賞を、昨年は「手造り昆布舞扇」が水産庁長官賞を受賞するなど、ありがたいことに数多くの賞を拝受いたしました。「ちりめん山椒」は直営店でも一番人気の商品となっております。