今やらないで、いつやるんだ。町の居酒屋がこども食堂の運営モデルを構築

飲食・宿泊2023.03.14

今やらないで、いつやるんだ。町の居酒屋がこども食堂の運営モデルを構築

2023.03.14

今やらないで、いつやるんだ。町の居酒屋がこども食堂の運営モデルを構築

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地域の子どもたちに無償や低価格で食事を提供するこども食堂。ここ10年ほどで子どもの貧困や孤食問題への社会的関心が高まるにつれ、NPO法人や民間企業が参入するケースが増えてきた。現在、こども食堂は全国に約7,000カ所があるといわれている。

店舗や調理のできる人材がそろっている外食産業は、他業種よりこども食堂への参入がしやすい面がある。従業員にとっても、子どもや地域社会とのふれあいが本業のモチベーションアップにつながるケースが多いようだ。都内で居酒屋業態「ひない小町」を展開する傍ら、こども食堂を運営する感動キューブ株式会社の代表取締役社長 佐藤政也氏に、始めたきっかけや飲食店が参入する意義、反響などについて伺った。

目次

子どもたちの居場所を作りたい思いが原動力に

感動キューブ株式会社がこども食堂を始めたのは2021年5月。場所は焼き鳥居酒屋「ひない小町」蒲田店で、毎日17時から20時まで開催している。子どもは無料、大人は500円(初回無料)で、メニューは日替わりだ。LINEから予約もできる。1日6名ほど、年間で子どもは延べ2,100名、大人延べ300名が利用した。佐藤氏は、こども食堂をはじめたきっかけは2つあるという。

感動キューブ株式会社
代表取締役社長 佐藤 政也 氏

「まずはコロナ禍で、飲食店が営業の自粛を求められたこと。2021年5月はGWが開けても行動制限が続き、本業の居酒屋がまったく稼働できない状態でした。一方で、前年とは違って2021年度は飲食店への休業補償制度があり、営業を自粛してもなんとかなる状態だったのです」

さらに佐藤氏は、コロナ禍での休校や課外活動の中止などで「子供たちの居場所が失われている」とも感じていた。

「私自身、子どもの頃から周囲の友人や大人たちに助けられて育った経験があり、『自分は1人じゃないんだ』と思いながら生きてきました。学校へ行けば必ず友達と会えますが、コロナ禍で休校もありました。特に核家族で両親が働いているような家庭では、食事も1人で摂ることになってしまいます。そういう子が集まる場所を作りたいと思ったのです」

ぎょうざパーティ

食事の時間に同じテーブルを囲むことは、子どもにとってリアルな社会体験になる。友人や大人たち、異なる年齢の子どもやスタッフに囲まれ、配膳や「こんにちは」「いただきます」などの挨拶をかわす。社会を生きる基礎的なコミュニケーションが、コロナ禍で失われつつあると感じていた。

飲食店の経営は決して明るいとはいえない状況だったが、「食の事業者として、こういう時だからこそ、貢献できる事をやるべきではないか、今やらないで、いつやるんだ」という思いで参入を決意したという。

リアルな体験が、従業員のモチベーションアップにつながる

感動キューブのグループ企業には、サービス業の新人研修や店長・マネージャー育成、評価制度構築などを手掛ける株式会社ホスピタリティ&グローイング・ジャパンがある。佐藤氏も、これまでに多くの新人や若手社員と接する中で、教育の重要性を感じていた。こども食堂に関わることで、従業員も新たなモチベーションになるとの思いもあったという。

アジの三枚おろし実演

「最初は『本業が大変なときにボランティア活動をするのか』という意見もありました。しかし実際に運営を開始して子どもたちが来ると、180度見え方が変わるんです。子供たちは純粋で、目がキラキラしている。

中には家庭環境が複雑で、深刻な悩みを抱えている子もいます。さまざまな子どもの成長を見守る中で、次第に『自分たちがしっかり運営していかないと』という使命感が従業員のなかに生まれていきました」

最初はおっかなびっくり、ドキドキしながらやってくる子がほとんどだが、徐々に打ち解けて会話ができるようになる。今ではスタッフの名前や誕生日を覚え、バレンタインなどのイベントでは子どもたちがお菓子や手紙をくれることもあるそうだ。スタッフ以外にも、近所の弁護士事務所がボランティアで勉強を教えたり、読み聞かせやパソコン教室が開催されたりすることもある。

個室を改装したこども食堂

「少し大きな子どもからは、将来の相談を受けることもあります。そうしたコミュニケーションを通して、スタッフも社会的なやりがいを感じ、成長していくんですね」

社会的な取り組みは、従業員の教育だけでなく採用にもプラスに働いているという。佐藤氏は、「こども食堂の運営をして、悪かったことは1つもない」と語る。

気になる資金面は、補助金や寄付を活用

こども食堂の運営にあたって、気になるのは資金面だ。

「最初はややマイナス収支を予想していましたが、実際はトントンといったところです。お客様などからの寄付に加え、東京都には『子供食堂推進事業』の補助金もあるのでやりやすい部分はあると思います」

寄付はホームページ経由と、店内で導入しているモバイルオーダーシステム「Dinii」からチップを送れる仕組みも活用している。「飲食しながら社会貢献できるのは、お客様にとっても分かりやすい」という。本業の居酒屋では、販促効果もあったそうだ。

「こども食堂の取り組みを知って、これまでグルメサイト経由ではリーチできていなかった層のお客様が増えました。個人で来店された際にこども食堂について知り、“あの店にはこども食堂があるから”と会社の宴会でも当店をご利用いただいた方もいます。社会的な取り組みを支援したい方は多く、行政や他企業とのつながりもできるので、思ったよりもプラスの面は大きいと感じます」

本業とこども食堂の収支と区別し、未来への投資と考える

生きたタコとのふれあい

こども食堂の運営では、「本業とPL(損益計算書)を分けること」も大切だという。

「当社のこども食堂は『ひない小町 蒲田店』の店内で営業していますが、材料費など店舗とは完全に収支を分けています。民間企業がこども食堂を運営していると、補助金の使途でプロフィットとの関連性を見られることもあります。数字を聞かれた際にきちんと説明するためにも、PLは分けることが重要です」

きちんと数字を区別すれば、社内にも社外にも説明がしやすくなる。

「当社はグループ全体で、未来に向けて何をやるべきか、そのために教育を含めどのような投資をすべきかを常に議論しています。その土壌があるからこそ、こども食堂のような社会活動も発想として出てくるのです。この活動は『来月マネタイズしよう』という短期的なものではなく、5年、10年先を見据えた価値を重視した事業開発の一環なのです」

もちろん1年ごとの決算も大切だが、飲食業の未来のあり方から「今、何をすべきか」を考えることが大切だという。

外食産業による社会活動を全国に広めたい

営利企業が社会貢献をするのは、簡単なことではない。何をすべきか、すぐに答えの出るものでもないだろう。だからこそ行動することが大事だという。

「社会の中の事業者として未来のあり方を考えた際、私たちが選んだのがこども食堂という形でした。これからは飲食事業者も地域に関わり、社会的な役割と利益、経済的価値を両立させていく時代です。食に関するリアルな社会体験は、その先にきっと感動があります。一人でも多くの方に感動を体験してもらい、リアルな社会体験を通して得る心の動きはかけがえのないものです」

手づくりハンバーグ

子どもたちが「ありがとう」と言ってくれると、スタッフも「頑張ってよかった」と力が湧いてくる。それが何よりの教育になる上に、子どもにとっては「自分が感謝の気持ちを伝えたら大人がうれしそうにした」という原体験になる。「それだけでも、こども食堂をやる意義がある」という。

「食事を通した子どもたちとのコミュニケーションは、本当に楽しいものです。みんな、自然と笑顔になります。だからこそ、飲食店さんにはぜひこども食堂を運営してほしいですね。飲食店だから毎日できますし、いつ来てもやっている、という安心感もあり、地域の居場所としての役割も得られると思います。当社には運営マニュアルもあり、すでにいくつかの企業が見学に来てくださっています。社会的な関心は高いと感じるので、この取組みがさらに広がることを祈っています」

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感動キューブ株式会社

所在地:東京都新宿区西新宿1-24-1 エステック情報ビル18F・19F
設立:1984年4月6日
代表者:代表取締役社長 佐藤 政也
公式ホームページ:https://smile-c.co.jp/
こども食堂お問い合わせ:https://kando-kodomo.org/kodomo/

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