「お客様が誰なのか」把握すれば、もっとサービスを向上できる
【Q】ITによる顧客体験の高め方を、もう少し教えてください。
Amazonのトップ画面は、購買履歴や閲覧傾向に基づいて、ユーザーごとに違います。IT企業やEC業界で既に当たり前になっている仕組みは本来、飲食業界でも似たようなサービスに活用できるはずです。たとえば、店舗のホームページでワインリストへの熱心な閲覧履歴と紐づいたお客様から予約が入れば、ワイン好きなのかなと予想できます。「ワインに詳しいAさんをウェイターにしよう」といった対応で顧客体験の向上が可能です。
ただ、こうしたサービスは実際、現時点では難しいでしょう。何十万人とご来店するお客様のデータが、ほぼ蓄積できていないからです。理由は、飲食店の決済手段のほとんどが現金払いという現状にあります。
POSデータを使えば、何がいつ何個売れたかを把握できます。しかし、それを誰が買ったかは別の話です。サービス向上に重要なのはお客様の好みや来店頻度といった行動履歴ですが、現金払いではデータ化できず、実像を把握できません。
我々はモバイルオーダーアプリを自社開発し、スマート決済(キャッシュレス)に取り組んでいます。ひとつは、お客様の利便性向上が目的です。同時に、取得できる顧客データの蓄積で、より良い体験の提供を目指しています。
【Q】開発されたソリューションを、他の外食企業にも提供されていますね。
我々はあくまでも、ITベンチャーではなく外食企業です。そして、人手不足はクリスプだけでなく、業界全体の共通課題になっています。
データを活用すれば従業員のトレーニングを増やさなくても、今と同じ人的リソースでお客様の満足度を高めることができるのです。
これからは顧客と持続的な関係性を築けるかどうかが、飲食店の生き残る条件になると思います。そのためにもIT化を進めていく必要があります。これまでは何千万円という予算をかけてシステムを構築しないとできなかったことが、今は月額数万~数十万円で導入できます。少し繁盛している飲食店だったら、実現可能なレベルです。
アメリカではテクノロジーを駆使した飲食業界に、優秀な人材が集まっている
【Q】小規模な飲食店もITでお客様とつながりを作ることができるのですね。
規模が大きければ勝てるわけではないのが、飲食業の面白いところです。極端にいえば、スターバックスコーヒーの隣の喫茶店が、スタバより集客することだって可能です。
日本では飲食業に対して、今後伸びていくイメージを経営者自身すら持てないでいるように感じます。でもアメリカでは、10店舗規模の飲食スタートアップ企業に、IT業界から優秀な人材がどんどん集まっています。中国でも同様です。世界全体を見渡すと、飲食は成長産業で、そこではフード×テクノロジーがキーワードになっています。
オフラインにいるお客様をオンラインに乗せることができれば、売り方はガラッと変わっていくでしょう。今データを活用できている外食企業があるとしても、実はまだ原始時代のようなものです。飲食業界には、まだまだ可能性があると思います。
3年後には、5店舗くらいの規模なら「まだエンジニア雇っていないの?」という世界になっているかもしれません。当然ながら、お客様のことを知れば知るほど、お客様に喜んでいただくことは容易になります。当社の取り組みもまだまだ道半ばではありますが、テクノロジーを使って、そこを目指していきたいのです。
株式会社クリスプ
住所:東京都港区三田1-10-10 1F
事業内容:クリスプ・サラダワークス、アール・ピザの運営
公式URL:https://www.crisp.co.jp/