「セルフでお酒を選び、コンロ調理をしていただくことで、店としては人件費を削減したぶん、価格に還元することができます。そして、お客様も好きなワインを探したり、友人同士でわいわい調理する楽しさを味わっていただけます。
さらに、これはジョークでやっていますが、“人件費削減中”と機器本体に書かれたルンバを動かすこともあります。すごく面白がっていただけますね」
お客が来店するには2つ以上の動機が必要
楽しい、面白いという“体験の提供”をコンロ家はテーマに掲げているという。それはなぜなのか。
「それは、もっとも意識している数字が客数だからです。極端にいえば、売上が減っても価格を上げたり、人件費を抑えたりすれば利益は増やせます。でも、減った客数を増やすことは一番難しいんです。ですから、まず店に足を運んでいただき、さらにリピーターになっていただく必要があります。
そして、お客様が店に足を運ぶには、動機はひとつでは足りない、と私は思っています。“美味しい”だけでも、“安い”だけでもダメで、複数の動機があって初めて『あのお店に行ってみよう!』となります。コンロ家は、美味しい、安いに加えて“面白い”が武器です。楽しい体験をされたお客様は、今度はお友達を連れて来てくださるでしょう」
宝探し感覚で店内を歩き回って面白さを探してほしいと、飲み放題のワイン樽はあえてランダムに設置しているという。
「大衆酒場という業態は、料理やサービスでそれぞれオンリーワンを目指しますが、店のつくりはどうしても似通ったものになります。お金をかけたオシャレな店か、お金をかけず無骨さを出す店の2パターンがほとんどです。お金の大小という縦軸だけではなく、横軸でできることを考え、空間のオンリーワンを目指して追求したのが“面白さ”でした」
店内は、いたるところにユーモアのある張り紙や遊び心にあふれた仕掛けがある。 そのひとつ、ビールの頼み方で値段が変わる「お客様は神様ではありません」という張り紙は、2018年、SNSで拡散されマスメディアにも取り上げられるほど大きな話題になった。
「もちろん、これも冗談で“おい、生ビール”と注文されても、定価の380円でお出しします。こういう考え方もあると知っていただくきっかけになればいいので。あえてタブーに切り込んでみるのも面白いかな、と貼ってみました」(笑)