一方で「ホスピタリティ」とは、その人に対して、何をしたら喜んでくれるかというのを考えた、1対1のサービスです。例えば、常連のお客様に対して、「今日も○○さんのお好きな料理をご用意していますよ」とお声がけするとか。つまり、サービスプラスアルファで喜びや感動を生みだします。
ですから、いくら喜ばせたいと言っても基本のサービスが疎かになっていては成り立たないのがホスピタリティです。しかも、サービスと違い、その場の個人の対応力が求められるので、ホスピタリティについてマニュアル化することはできません。
ITの活用によってアナログな努力が活きる
【Q】マニュアル化できないものを、どのように教育するのでしょうか
結論から言うと、おもてなしに完全な正解はありません。ですから簡単にこうだよ、と教えることもできません。まずは、その重要性に気づいてもらうことが大切です。
それにはお店の先輩や支配人が、率先しておもてなしを実践して見せることやお客様とのやり取りを見せる中で、自分もお客様とあんな人間関係を作ってみたいと思わせることで、後輩を育成していきます。また、そういうやり取りが見える環境を作ってあげることも大切です。
【Q】環境を作るとは、どのようなことをするのでしょうか?
おもてなしは、1対1のサービスの提供にあると言いましたが、実はこれにはITとの連動が欠かせません。弊社では、予約や顧客管理システムに『トレタ』や『オープンテーブル』を使っています。
こうしたシステムを使うと、お客様の情報を、メモとして残すことができます。
例えば、あるお客様がいつも特定の銘柄のビールを注文されているとしたら、オーダーに伺った際に「今日も◯◯さんの好きな『水曜日のネコ』を用意していますよ」と、一言お声掛けするとか。あるいは、辛いものをよく頼まれるお客様に、「この料理はもっと辛口にアレンジ可能ですよ」と話しかけてみるとか。注文履歴だけでも、相当な量の情報を得ることができます。
他にも、来店回数を見て、次の来店の際には、席までシェフがあいさつに行ってみようとか、あるいはお客様の予約席の取り方に応じて、テーブル席がお気に入りのようだから、できるだけテーブル席を用意しておこうとか。得られた情報をどのようにホスピタリティに活かすかは、個人のセンスによりますが、少なくとも、これまでマニュアル化されたサービスではできなかった行動ができるようになるわけです。つまり、ITも大切ですが、導入しただけではダメで、それ以上にどれくらいアナログな努力をするかが大切だと考えます。