「独立する前に、同じ会社で一緒に働いていた同僚たちが、うちで働きたいと集まって来てくれました。嬉しかったのですが、1つしかない店舗に社員が5~6人いる状況となり、給与どころか、社会保険料だけでも手一杯という感じになってしまいました。ですから急速に増えたというより、拡大せざるを得なかったという方が近いですね(笑)」
最初は、雇用の受け皿としての店舗展開だった。しかしそれ以降も出店ペースは落ちていない、それは店が増えていく中で飲食店としての新たな役割が見えてきたからだという。
「店舗数が増えてくると、今度は提供する食材の量が不足し始めました。その時、北海道で店をやっているのだから、北海道産の食材を使おうと思い、道内で生産地を巡り始めたのです」
産地巡りをすると、現場の漁師さんから、いま直面している様々な悩みを聞くようになる。その中には、最近これまで獲れていたイカやサケ、ホッケではなく、ブリやマグロが水揚げされるようになったという相談もあった。
「意外に思われるかもしれませんが、北海道にはコールドチェーンが組まれていないため、マグロなどが水揚げされてきても冷凍できません。さらに青森の大間で揚がればキロ5,000~6,000円のマグロも、北海道で水揚げされるとキロ800~900円しか値がつきません。下手をするとそれでも売れない場合があるのです。そうした魚を、定期的に引き取らせていただくようになりました」
産地で生産者と直接繋がりながら、そうした値の付かない鮮魚を引き取るようになった結果、店の仕入れ値は下がり、地元の人にも喜んでもらえるようになったという。
北海道で成功できれば、東京進出もできる
いま、北海道の飲食業界では、低価格化が進み、“飲み放題、食べ放題が当たり前”という状態だそうだ。炭リッチも飲み放題を導入しているが、北海道では90分980円という破格の設定だ。東京も1,500円とかなり安いが、利益だけを考えるなら、東京や関東圏だけの出店もありえるのではないだろうか。しかし、平野氏は「それはしない」と言い切る。