焼鳥屋だけでやっていく理由

【Q】社員教育については、どのようなことを意識されていますか？

創業から、鳥貴族は「みんなの会社」にしていくということを言い続けてきました、世襲もしないと。あとは、やはり任せることだと思います。やはり気持ち良く楽しくやってもらいたい、のびのびとやってもらいたいということが、基本にあります。私自身は感情的になったりしないので、ほとんど怒ったことないですからね。でも、多分良い意味で緊張感を持たせる面を持っているんでしょう。それに怒らなくとも、最終的にはみんなちゃんとやってくれますから、それでいいと思っています。人間って怒られるのは絶対に嫌ですからね。

【Q】多業態へ展開せずに、焼鳥屋だけをされているのはなぜですか？

自分が同時にいろんなことをやれるタイプではなく不器用だと思うので、やることを分散させることができない。それからチェーンストアで一番のメリットは、やはりスケールメリットだと思います。例えばそこで得たメリットを、何かしらの形でお客様に還元することが一番喜んでいただけるんじゃないかと考えています。となると1業態に絞ったほうがいい。もっと言えば食材も絞ったほうが大量仕入れでコストダウンができますからね。例えばうちなら焼き鳥専門で約380店舗ですが、総合居酒屋のチェーン店に比べて鶏肉調達のスケールメリットは大きいと思います。

それに、さっきの社員教育の話にもつながりますが、いろんな業態をやると、社員への理念の落とし込みも難しくなると思っています。例えば弊社が今からラーメン屋もやろうとすると、これまで通り私の「焼き鳥愛」は伝えられても、「ラーメン愛」は伝えられないと思います、焼き鳥ほど愛情を持てないので。会社のトップが魂を込められないものでは、人の心は動かないと思います。それは社員でもお客様でも一緒です。私が一番に目指すのは、社員の「鳥貴族愛」ですよ。社員ひとりひとりがそれを持ってくれると強い。それが一番の教育だと思っています。

【Q】多業態展開への“誘惑”はありませんか？

大きな誘惑はありませんね。いい店はプライベートで行ったらいいと思ってますから（笑）。先日、ある方に「なんで御社にはライバルができないのか？」と聞かれたので、「私みたいに焼き鳥だけをここまでやる経営者がいてないからじゃないですか」と答えたんです。それは焼き鳥という業態の話だけではなく、私はある意味でお金を追いかけてないからだと思います。儲かりそうだからやるのではなしに、私は儲けるんだったら焼鳥屋でしか儲けたくないんですね。だから他業態展開も考えないんです。

【Q】現在の規模で、セントラルキッチンではなく、店舗で焼き鳥を仕込んでいるのは効率が悪いのでは？

これこそ私が考える“焼き鳥道”だと思うんですが、焼き鳥専門店で焼き鳥が本物でなかったら存在価値がないんですね。総合居酒屋と同じ焼き鳥では、鳥貴族に足を運んでもらえません。なんでわざわざうちの店に足を運んでもらえるかといえば、焼き鳥だけは他に負けないからです。仮に焼鳥の味だけではどこかのお店に負ける場合もあるかもしれません。しかし、味、ボリューム、価格というトータルでは絶対に負けない。そこに弊社の存在価値があると思っています。そのためにも必ず店で串打ちをしていますし、非効率だとしてもそこは崩せないですよね。

ただ、タレだけは味の均一化のためセントラルキッチンで作っていますよ。これはセントラルキッチンの最大のメリットだと思いますが、鳥貴族としての味を均一化するためには、この方が良かったためです。

2021年に1,000店舗達成を目指す

【Q】「国産国消」ということを謳われていますが、その意図は？

弊社としてはシニア世代もお客様として増やしていきたい。特にその世代の方々は、食の安心安全に対して非常に敏感です。それから、やはり日本の企業として自国の第一次産業を支援したい、貢献したいという気持ちも湧き出てきました。その両面の思いから国産国消としています。

【Q】今後、「鳥貴族」が目指されることについてお教えください。

やはり焼鳥屋としての日本一のブランドを確立したいということと、将来、世界の鳥貴族になりたいと。そのためにまず国内でもっと力をつけて、そのあとで世界へ展開したい。くどいですが、そのためにもまずは国内での基盤づくりを。と思っています。