料理だけでなく食器にもおもてなしの心を込めて
-●オープンのきっかけをお教えください。
元々私は福岡・小倉の出身ですが、高校を卒業したあと、大学進学のために上京しました。大学では建築学を勉強していたこともあり、卒業後は商社へ入社し、建設資材の輸入販売の仕事を経験しました。しかし、いつしか自分で企画したメニューを作り、直接お客様へ提供する飲食業に興味を持つようになり、地元に戻り飲食店を出したいと思うようになったんです。その後、商社を退職し、1996年に沙羅の木小倉本店をオープンさせました。
-●「沙羅の木」という店名の由来についてお聞かせください。
実は、私の母の実家がお寺をやっているのですが、その実家には沙羅の木があったんです。東京から地元にもどってきたばかりだったので、幼少期の地元の思い出に関連した名前をつけたいと思い、「沙羅の木」と命名しました。小倉本店の入口横にも沙羅の木は植えてあり、オープン当初から店舗のシンボルです。
-●利用されるお客様はどのような方が多いですか?
平日と休日でがらりと変わりますが、平日のランチであれば50~60代の女性の方の懇親会で利用されることが多いですね。
また、土日・祝日であれば、結婚のお祝いの会や、結納、法事など、主にご親族で集まられる会でご利用いただいています。ゆったりとした空間で美味しい料理をのんびり食事ができるというところが、年配のお客様からご支持いただいています。
-●お店のコンセプトの「旬の大皿料理」というのは?
大皿料理というと、居酒屋や小料理屋のように、大きな器にどんと盛られている料理を想像される方も多いかと思いますが、当店では大きなお皿をキャンバスに見立て、そのキャンバスの上に旬の食材を盛り付けた小皿で絵を描くという意味なんです。
この器に器を重ねる盛り付けは、日本料理では邪道と言われているため、他店ではほとんど行っていません。しかし、私個人としては、和食の基本概念にのっとった料理を提供するよりも、見た目の斬新さや食器の美しさで、お客様を驚かせられる料理を提供したいという気持ちが一番にあります。
また、予め提供時に一人前ずつわけられていれば、料理の取り分けの手間もかからないですし、お食事の際に気を遣うシーンもありません。
-●お料理を盛り付けられている食器は、素敵なものばかりですね。
料理を提供する食器には、かなりこだわっています。当店を選び、わざわざお越しくださったお客様に、料理だけでなく食器にもおもてなしの心を込めて提供しています。結婚のお祝いや結納などでご利用いただくことも多いため、お客様の人生の節目となる大切な場面を、美しい食器で彩りたいという思いがあるからです。二・三年に一度は、お付き合いのある有田焼きや、備前焼きの窯元へ出向き、沙羅の木オリジナルの食器を特注で作っていただいています。