FOODCROSS 2021展示会レポート。炭火焼肉たむら、フード関連企業のニューノーマル時代の取り組み(前編)

特集記事2021.12.08

FOODCROSS 2021展示会レポート。炭火焼肉たむら、フード関連企業のニューノーマル時代の取り組み(前編)

2021.12.08

FOODCROSS 2021展示会レポート。炭火焼肉たむら、フード関連企業のニューノーマル時代の取り組み(前編)

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フード業界のビジネス機会を創出するイベント『FOODCROSS conference 2021』が11月18日に開催された。飲食店や生産者、卸、食品メーカー、その他の関連サービス事業者など、食に関わるすべての人が手を取り合い、ともに未来を考えるための体験型カンファレンスだ。

主催したインフォマート執行役員の杉山はイベントのコンセプトとして“つなぐ”を掲げ、「コロナ禍でも、新たな取り組みを始めている飲食店や卸企業はたくさんいます。今こそ業界の垣根を超えた交流の場を作りたい。業界に寄り添い、ニューノーマルな飲食業界の発展に貢献していければ」と想いを語った。「炭火焼肉たむら」オーナー、たむらけんじ氏のトークや参加企業同士の1on1トークセッションなど、意見交換は大盛況。当日の熱い模様をレポートする。

目次

「炭火焼肉たむら」たむらけんじが、コロナ禍の飲食店経営者として見たもの

たむらけんじ氏

まずはイベントの目玉である、「炭火焼肉たむら」オーナーであり、お笑い芸人のたむらけんじ氏が登壇。2007年に『炭火焼肉たむら』を開業したきっかけは偶然のつながりだった。

義母が数年前から経営していた焼肉屋を辞めることになり、店を閉じるのにもお金がかかると悩んでいたのを見て、「当時めちゃめちゃ世話になっていたので、男として何かお返ししないといけない、という気持ち」で事業を譲り受けたという。

「現在は直営店のほかFC店を含めて10店舗展開しています。飲食業のノウハウはゼロでしたが、先輩たちによく美味しい店に連れて行ってもらっていた経験から舌だけは肥えていました。数ヶ月で新たな経営者に譲るつもりでしたが、タレなどにこだわってあっという間に人気が出て、やめられなくなったのです」(たむらけんじ氏)

コロナ禍の影響については「経営者にとっては悩みどころだと思います。僕もいろんなことを考えました。こんなときこそ店を開けて、お客様を元気にしたいと思った時期もありましたが、従業員の一部から『やっぱりコロナが怖い』との声があがり、そこで従業員の命がいちばん大事だと改めて気付いた」といい、すぐに休業を決断したという。

誰もがチャレンジできる居場所を作りたい

コロナ禍でも、たむら氏は新たなチャレンジを続けている。SDGsへの関心を少しでも広めようと、メディア出演時にSDGsのバッジをつけ、食品ロスの問題に日々取り組んでいる。日頃からフード業界への思いをメディアで発信しており、今年の夏にはテレビ番組の企画で、飲食店を出したいと考えている人が1日から自由に料理をふるまえるシェアキッチンのレストラン『CORO CORO』をオープンさせた。

「料理好きな人は、誰かに食べてもらいたいと思っています。しかし、飲食店を開くのはとても大変だし、開店できてもその店を継続するのはもっと大変です。そんな人たちが少しでもチャレンジしやすくなる場所を作りたいと思いました」(たむらけんじ氏)

初めて家族に料理をふるまって、子どもたちに美味しいと喜ばれた男性や、有名料理店で修行している若き料理人、自分のカフェを開きたい女性など、たくさんの人が日替わりでプロの料理人として腕を振るっている。

「SDGsといっても、具体的にどうビジネスにつなげていくのか。僕がSDGsのバッジを付けているのも、若者に興味を持ってほしいからです。少しでも多くの人に関心をもってもらうことで、社会全体が変わるかもしれません。

坂田師匠にも『たとえウケなくても、やり続けることが大事』とアドバイスをもらいました。チャレンジは大切なキーワードです。コロナ禍のおかげで新しい発見もあったし、コロナ禍だからこそできたこともあると思います」(たむらけんじ氏)

イベントでは環境問題や食文化、生産性の向上など、フード業界の課題に臨む企業が最新の取り組みを展示していた。ここから、当日参加した企業のブースを紹介しよう。

国産バナナで日本を元気にしたい

バナナの神様株式会社

日本人がよく食べる果物第1位にもかかわらず、そのほとんどを輸入に頼っているバナナ。独自のバイオ技術により国産化を成功させ、スムージーやバナナ茶などを販売する。同社の国産バナナは皮まで食べられる希少種で廃棄量が少ない上、糖度はメロンと同じかそれ以上。上品な甘みが特徴だ。

生産から販売までを一貫して担う6次産業化、さらに販売員が演じるミュージカルとも組み合わせた食×エンタメの視点から、「バナナで日本を元気にする」を目標に掲げる。直営FCを含め、今後5年で1000店舗を目指している。

未来の子どもたちのために、日本の食文化と食育を創造

株式会社和音人

三軒茶屋で、焼き鳥×山形郷土料理『和音人月山』や、創作餃子×自然派ワイン『GYOZA SHOCK』、オーガニック野菜×イタリアン『MARUNOWA TABLEりんどう』など5軒の飲食店を営むかたわら、創業と同時に山形で農業をスタート。

生産者とのつながりを大切にしたいという想いから、社長や社員たちがみずから土と向き合っている。日本初の『ピノタージュ』というワイン用ブドウの栽培を行い、2017年には自社ブドウでのワインを仕込めるまでに成長。今後はワイナリーの設立と、在来種、固定種の栽培も視野に入れ、三軒茶屋と山形から豊かな食文化を発信していく。

地球とカラダにやさしい大豆ミートの可能性を味わって

株式会社D.K International

地球環境に負荷を与える肉や魚、卵、乳製品のような動物性素材ではなく、植物性のPlant based food(植物由来の原材料からなる食品)を提供する新感覚のカフェ。今回のFOODCROSSでは大豆ミートのラザニアとグラタンを提供した。

大豆からタンパク質を取り出し、繊維状にして肉に近い食感に仕上げた大豆ミートは、栄養価が高い上に低カロリー。さらに生産時の水消費量が牛を飼育する場合の1/8と、わずかな資源から育つサステナブルな食材だ。そのまろやかな味わいと奥深さは、動物性の肉をもはや超えているほど。これからの飲食店は、食材も地球に優しいものを選ぶ時代がやってくる。SDGsをキーワードに、新しい食材に注目してみたい。

ニーズが拡大するキッチンカーで新規開業支援

株式会社Mellow

ここ数年、注目されているキッチンカービジネス。当初はビジネス街でのランチ販売が主流だったが、コロナ禍でリモートワークが一般化したことで住宅街にも商圏が拡大。

株式会社Mellowでは、「より多くの人がチャレンジしやすい環境を作りたい」という想いでフードトラック事業を営むほか、年間5万件に上るキッチンカー×出店場所のプラットフォームデータを活用し、開業経営支援も行う。

飲食事業をやってみたいけど、何から手を付ければいいのか分からないという人でも最適なメニューや出店場所を選ぶことができ、多くの人にチャンスが広がる。キッチンカーには空き地の活用や地域のにぎわい創出、飲食店の販売チャネルの最大化など、多くの可能性が詰まっている。

ゴーストレストラン運営の専門家集団

GRC株式会社

コロナ禍でデリバリー需要が増えるなか、右肩上がりで伸びているのがゴーストレストランだ。デリバリー専門で客席を持たず、1つのキッチンを複数のブランドで共有するため利益率が高い。

GRCでは自らがゴーストレストランを運営するほか、初期導入コストわずか5万円で開業支援のコンサルティングを行う。飲食店経営の初心者でも、同社の有する10~15形態のブランドから自由に選んで開業可能。

「デリバリー専門なので対面接客がない分、外国籍の方にとっても言葉の壁がなく創業しやすい」という。既存の飲食店だけでなく、より多くの人に経営のチャンスを提供し「業界をもっと発展させていきたい」と語る。

デリバリーの利益を最大化する、飲食店のための一元管理サービス

株式会社tacoms

複数のフードデリバリー、テイクアウトサービスからの注文を、タブレットで簡単に管理できるサービス『CAMEL』を提供。多くの飲食店では、サービスごとに複数のタブレットを保有しなければならず、レジへの打ち直しでも手間や入力ミスなどの課題に悩まされている。

『CAMEL』では各サービスの管理画面を一括して閲覧できるほか、POSシステムと連動させて再入力の手間を省くことも可能。実は当初、デリバリーアプリの開発をめざしていたというが、その過程で飲食店が抱える課題に気づいたことが現在の事業に結びついた。お客様からは「新しいサービスを導入してもタブレット端末が増えることがないので、どんどん導入しやすくなった」との声が多数。飲食店の利益最大化に貢献したいという。

食品表示ラベルをかんたん作成

タカラ食品工業株式会社/ブラザー販売株式会社

コロナ禍でECやデリバリーなど、新たな販売チャンネルを模索する飲食店も多い。その際、ハードルとなるのが製品に貼るラベル、食品表示だ。アレルギーや消費期限の表示漏れや複雑な成分の計算など、課題は多い。また食品表示に関わる法律は改正も多く、すべてを把握するのは難しい。

『食品表示のミカタ』は、タカラ食品工業株式会社が食品メーカーだからこそのノウハウを用いて、飲食店が抱える製品ラベルの内容を簡単に作成できるシステム。製品の品質保証を担当していた社員が開発にも加わり、単なるシステム販売に留まらない、飲食店が抱えるさまざまな悩みや課題に応えられるのが強みだ。

ラベルの印刷をするブラザーの端末機器を『食品表示のミカタ』と連携させれば、誰でも簡単にラベル作成ができる。食品会社のノウハウを外部に出すことで、飲食業界に元気を取り戻したいという開発担当者の思いが詰まったシステムだ。インフォマートの規格書管理システム『BtoBプラットフォーム規格書』との連携で、原材料情報などをまとめて自動作成できる。


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