2024年以降の法改正一覧
最新の法改正には、電子帳簿保存法や働き方改革関連法などが挙げられる。過去に施行されていたものの、経過措置期間の終了となり、対応が必要となる制度もある。法改正の一覧を改正内容と共に紹介する。
施行年月日 | 法令 | 改正内容 |
---|---|---|
2024年1月1日 | 電子帳簿保存法改正 参考:国税庁 | 電子取引にかかるデータの電子保存が一律義務化 |
2024年4月1日 | 労働基準法改正(働き方改革関連法) 参考:国土交通省 | 自動車運転業務における時間外労働の上限が年960時間に規制 |
労働安全衛生規則改正 参考:厚生労働省 | リスクアセスメント対象物を扱う事業場において化学物質管理者の専任が義務化 | |
金融商品取引法改正 参考:金融庁 | 四半期報告書の廃止など | |
商標法改正 参考:特許庁 | 他人の氏名を含む商標の登録要件の緩和 | |
不正競争防止法改正 参考:特許庁 | ブランド・デザインなどの保護強化、国際的な事業展開に関する制度整備など | |
障害者差別解消法改正 参考:内閣府 | 事業者による障害のある人への合理的配慮の提供が義務化 | |
障害者総合支援法改正 参考:厚生労働省 | 障がい者雇用を向上させる支援サービスの設立・体制の強化など | |
食品衛生法改正に伴う経過措置期間の終了 参考:厚生労働省 | 漬物製造業、水産製品製造業、液卵製造業、食品の小分け業も食品衛生法に基づく許可・届け出が必要 | |
2024年6月1日 | 年金制度改正法(社会保険の適用拡大) 参考:日本年金機構 | 被保険者数が常時50人超の事業所で働く短時間労働者(条件あり)にも社会保険の加入が義務化 2020年5月年金制度改正法 参考:厚生労働省 |
2024年11月までに施行 | 景品表示法改正 参考:消費者庁 | 事業者の自主的な取り組みの促進、違反行為への抑止力の強化など |
雇用保険法(高年齢雇用継続給付の見直し) 参考:厚生労働省 | 雇用保険で給付される高年齢者雇用継続給付の最大給付率が15%から10%に引き下げ |
食品等事業者が注目すべき2024年以降の法改正
2024年以降に施行される法改正は多い。ここでは、食品業界に関連する制度について詳しく解説する。
食品衛生法
改正食品衛生法は2020年6月1日より施行されたが、経過措置期間が設けられるものもあった。猶予期間を経て施行された内容には、以下の2つが挙げられる。
● HACCP(ハサップ)による衛生管理の義務化
● 営業許可業種の追加
HACCP(ハサップ)による衛生管理の義務化
「HACCP」とは、Hazard(危害)Analysis(分析)Critical(重要)Control(管理・制御)Point(点)の頭文字を取った言葉で、食品の安全性を確保するための制度のこと。国際基準「HACCP(ハサップ)」に適合した食品衛生管理は、施行から1年の猶予期間を経て、2021年6月1日より義務化された。
従来は、生産された最終製品の一部を抜き取って検査を行い、製品の安全性をチェックしていただけであった。しかし、HACCPに基づく衛生管理では、原材料の調達から製造、製品の出荷までの全工程において、危険要因を分析しなければならない。つまり、従来より厳しい基準のもと、継続的な監視と記録が必要になるということだ。
HACCPに基づく衛生管理が義務化されているのは、以下の3つの事業者。
● 大規模事業者(食品の取り扱いに従事する者が50人以上である事業場)
● と畜場
● 食鳥処理場
小規模な営業者の場合は、HACCPの考え方を取り入れた衛生管理が求められる。また、以下の場合は対象外となる。
◆ 農業及び水産業における食品の採取業はHACCPに沿った衛生管理の制度化の対象外です。 1.食品又は添加物の輸入業 ◆ 学校や病院等の営業ではない集団給食施設もHACCPに沿った衛生管理を実施しなければなりませんが、1回の提供食数が20食程度未満の施設は対応が不要です。 |
引用:厚生労働省「HACCPに沿った衛生管理の制度化について」
【対応策】
● 一般衛生管理プログラムの作成
● 施設設備の衛生管理
● 従業員への衛生教育
● 設設備・器具などの保守点検
営業許可業種の追加
2024年5月31日で経過措置期間が終了する内容には、営業許可業種の追加が挙げられる。今後は、以下の業種でも営業許可が必要となる。
● 液卵製造業
● 漬物製造業
● 水産食品製造業
参考:厚生労働省「HACCPの考え方を取り入れた衛生管理のための手引書」
【対応策】
● 営業許可業種に該当するかの確認
● 該当する場合、営業許可の取得
電子帳簿保存法
電子帳簿保存法とは、決算関係書類、各種帳簿などの書類を電子データで保存することを認めた法律。2024年1月より、電子データで受け取った請求書や納品書などの国税関係書類を電子取引データとして残すことが必須となった。電子データで受け取った書類には、改ざんを防止・真実性の担保のため「タイムスタンプ」の付与が必要となる。
タイムスタンプ:電子書類が作られた日付と時刻を記録する技術のこと
【対応策】
● 電子取引の状況の把握
● データの保存方法や保存場所の決定
● タイムスタンプ・訂正削除履歴が残るシステムの導入
電子帳簿保存法はたびたび改正されているので、改正があるごとにバージョンアップされるクラウド型の請求書システムなどの導入を検討するのがいいだろう。
年金制度改正法
2024年10月より、従業員数51人以上の企業で働くパートやアルバイトなどの短時間労働者に対して、社会保険に加入させることが義務化される。社会保険の加入が義務化されるのは、以下の要件を満たす場合だ。
● 1週の所定労働時間が20時間以上
● 月額賃金が8.8万円以上(基本給及び諸手当)
● 雇用期間が2か月を超える見込みがある
● 学生ではない(休学中や夜間学生は加入対象)
社会保険の加入対象となる従業員を加入させない場合、6ヵ月以下の懲役、または50万円以下の罰則が課される。また、過去2年分の未納分を徴収される・ハローワークでの求人が不可になることもあるため、注意が必要だ。
【対応策】
● 短時間労働者の適用者の把握
● 自社が負担すべき社会保険料の把握
● 対象者への制度の周知・説明
働き方改革関連法
物流の2024年問題と呼ばれ、たびたびニュースでも話題に上がっていた、働き方改革関連法。2024年4月1日より、自動車運転業務の労働時間の上限が960時間に制限される。万が一、上限を超えて残業を命じた場合は6ヵ月の懲役または30万円以下の罰金が課される。
他にも、以下のような内容が挙げられる。
項目 | 内容 |
---|---|
拘束時間 | 1日:13時間以内 1ヵ月:原則284時間以内 1年:原則3,300時間以内 |
休憩時間 | 継続8時間 |
連続運転時間 | 原則4時間 |
働き方改革関連法の施行により、ドライバーの長時間労働ができなくなるため、企業の利益が減少してしまう恐れがある。また、ドライバーの離職、荷主側における運賃の上昇といった問題が生じる可能性もある。
【対応策】
● 働き方改革関連法に合った制度・規則の実施・従業員への周知
● 管理方法の見直しや改善
● 賃金体系・手当の見直し
● 勤怠管理のデジタル化
● 人材配置の最適化
まとめ
2024年以降は、多くの法改正が施行されることとなる。特に、食品衛生法や電子帳簿保存法、年金制度改正、働き方改革関連法は、多くの食品事業者に該当する内容だ。業務内容・ルールの改善、従業員への制度の説明や教育、新しいシステムの導入など、改正法に合わせたさまざまな対策が必要となる。
法改正は、知らなかったでは済まされない。法を守らないことで罰則や企業イメージの低下につながる恐れがあるからだ。早めに情報収集を行い、適切な対応策の実施が必須となる。