2022年10月から社会保険の適用拡大。人事担当の対応ポイントまとめ

法令対策2022.06.22

2022年10月から社会保険の適用拡大。人事担当の対応ポイントまとめ

2022.06.22

2022年10月から社会保険の適用拡大。人事担当の対応ポイントまとめ

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年金法の改正により、2022年10月から、社会保険の適用拡大が段階的に施行される。今回の改正では、対象となる企業の規模や従業員の要件が広がるため、その対応に追われる人事担当も多いだろう。

特に飲食店や食品メーカーではアルバイトの従業員を雇用する割合が多く、今回の制度改正で社会保険加入が義務化されることになる。改めて制度の改正ポイント、従業員の社会保険加入の要件、人事担当者がすべき対応など、厚生労働省や日本年金機構の資料をもとに見ていこう。

目次

2022年10月から社会保険の適用範囲が拡大

2020年5月に成立した「年金制度の機能強化のための国民年金法等の一部を改正する法律」により、今後は社会保険に加入するパート・アルバイト従業員の対象範囲が広がることが決定した。主な変更点は以下の通りだ。

短時間労働者(パート・アルバイト)の被用者保険の適用要件

対象要件2016年10月~
(現行)
2022年10月~
(改正)
2024年10月~
(改正)
事業所事業所の規模常時500人超常時100人超常時50人超


短時間労働者

労働時間1週の所定労働時間が20時間以上変更なし変更なし
賃金月額88,000円以上変更なし変更なし
勤務期間継続して1年以上使用される見込み継続して2カ月を超えて使用される見込み継続して2カ月を超えて使用される見込み
適用除外学生ではないこと変更なし変更なし

[参考]日本年金機構「令和4年10月からの短時間労働者に対する健康保険・厚生年金保険の適用の拡大

現行の社会保険制度では、パート・アルバイトの加入義務は週30時間以上の所定労働時間となる従業員に限られている。ただし、週30時間未満でも上記(1)~(5)の要件をすべて満たしている場合は、社会保険に加入させる義務がある。飲食業などでは週の所定労働時間が20時間以下で働くパート・アルバイトも多いため、早めに対象者の把握をしたほうがよいだろう。

従業員数のカウント方法

2022年10月から従業員数が101人以上の企業は、社会保険の適用拡大の対象となる。ここでいう従業員数とは、現在の厚生年金保険の適用対象者数だ。これは正社員だけでなくパートやアルバイトも含まれる。

従業員数 = フルタイムで働く従業員 + 週労働時間がフルタイムの3/4以上の従業員

原則として、適用範囲の従業員数が常時上回る企業は社会保険の適用対象となる。具体的には、「直近12ヶ月の内、6ヶ月以上で従業員数を満たしている」などだ。つまり1年間の平均で従業員数が基準を上回っているなら、社会保険の適用対象となる可能性がある。

人事担当がすべき社会保険適用者への対応

社会保険の適用要件を満たすパート・アルバイトがいる企業の人事担当者は、速やかに社会保険への加入を推し進めなければならない。まずは何をやるべきなのか把握し、社会保険加入者の漏れがないよう取り組んでほしい。

社会保険の加入対象の把握

従業員ごとに社会保険へ加入する要件を満たしているか、一人ずつ確認していく必要がある。重要なのは、以前と異なる「勤務期間が2ヶ月以上の見込み」という点だ。

これまでは「雇用期間の定めがない」「1年以上雇用されている」「他の従業員が同様の雇用契約で1年以上働いた実績がある」などの場合に、社会保険の加入要件を満たしていることとなっていた。しかし2022年10月からは、以下のような場合でも社会保険の加入要件を満たすことなる。

・2ヶ月を超えて雇用されている
・他の従業員が同様の契約で2ヶ月以上雇用した実績がある
・2ヶ月未満の契約だが、契約書などの書面に更新する旨が記載されている

賃金に関する変更はなくとも、勤務時間や日数に変更があるパートやアルバイトがいる場合、加入要件を満たすか確認しておく必要がある。

社内での周知徹底

社会保険の加入対象となるパートやアルバイトがいる場合、社会保険の適用拡大について社内掲示板やメール、説明会などで周知することが必要だ。一から資料作成するのが難しい場合には、厚生労働省が用意したチラシやパンフレットもあるので確認するといい。

[参考]厚生労働省「社会保険適用拡大特設サイト

また、今回の改正で新たに社会保険の加入対象者になった従業員の中には、場合によっては配偶者の扶養内で働きたい方もいるかもしれない。個人面談などで個別に社会保険に加入するか意思を確認する必要がある。労働時間や勤務日数の変更を希望する従業員がいるなら、後から問題にならないようお互いに労働条件の擦り合わせをしておこう。

届出書の提出や電子申請

社会保険への要件を満たす短時間労働者がいる場合、会社側で社会保険の加入手続きや申請を行わなければならない。「健康保険・厚生年金保険被保険者資格取得届」を用意し、必要事項を記入して日本年金機構へ提出する必要がある。

[参考]日本年金機構「従業員を採用したとき

同書類には、被保険者となる従業員の氏名・生年月日・住所以外にも、個人番号(マイナンバー)や基礎年金番号などが求められる。また書類の提出は窓口や郵送以外にもオンラインでの電子申請もできるため、自社に適した方法で加入手続きを行うとよいだろう。

[参考]日本年金機構「電子申請・電子媒体申請(事業主・社会保険事務担当の方)

事前の対応で助成金が受け取れる制度も

制度が適用拡大される前にパートやアルバイトの社会保険加入を推し進めることで、助成金を受け取れる制度がある。社会保険の加入対象者が増えることで企業にとっては保険料負担などのコストも掛かるため、そうした出費を抑える対応策として「キャリアアップ助成金」を活用するのも有効な手段と言えるだろう。

[参考]厚生労働省「キャリアアップ助成金

キャリアアップ助成金の中には、今回の社会保険制度向けに以下のようなコースがある。
・「選択的適用拡大導入時処遇改善コース」
・「短時間労働者労働時間延長コース」

特に「選択的適用拡大導入時処遇改善コース」は、社会保険の適用拡大が施行される直前の2022年9月30日に廃止される。各コースが実施される前日までにキャリアアップ計画の作成・提出が必要になるため、早めに取り組むべきだ

制度改正を前向きに捉え、労働環境の見直しを

これまでは、社保加入ができないという理由で、パートやアルバイトの募集がなかなか集まらないケースも中にはあっただろう。今回の保険適用拡大を機会に「パートやアルバイトに対する福利厚生がしっかりしている企業である」と示すことで、人手不足が深刻な飲食業界で人材の獲得が期待できる。

企業側は、社会保険の加入手続きや保険料の増加などの負担もあるが、福利厚生の充実は従業員にとって安心して長く働ける企業の魅力としても捉えられるだろう。助成金などをうまく活用しながら、制度の改正に向け事前に準備していこう。


人手不足を“仕組み”で解決!飲食店の組織改革術

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