食の安全に関する事件と取り組み
日本での食を取り巻く現状や課題を振り返ると、冷凍食品への農薬混入や牛海綿状脳症(BSE)、生肉の食中毒、廃棄食材の使用、サプリメント食品の健康被害、食材の産地や品種などの偽装、カップ麺や缶詰などへの虫の混入、コンビニや飲食店従業員の不衛生なふるまいなど、様々な社会問題が発生し話題になった。こうした事例の蓄積で、消費者の食に対する安心・安全意識は高まっている。
内閣府や各省庁は、以前から食の安全性を高めるための様々な取り組みを行なっている。
しかし日本で発生した食中毒の事件数は、近年下げ止まりの傾向にあることを受け、 2018年に食品衛生法を改正し、すべての食品等事業者にHACCP制度の導入や、食品リコールをする際の自治体への届け出義務化、食品用器具・容器包装の材質規制などの大がかりな措置をとった。
「安心」と「安全」は似て異なるもの
食の安心・安全と並べて使われることが多いが、2つの言葉はそれぞれ別の意味をもつ。
まず食の安全とは、科学的な根拠に基づく判断が求められるもの。農林水産省などの公的機関が明確な基準や数値を定め、客観的に捉えられる。一方で、食の安心とは、消費者一人ひとりの心理的な判断による。
科学的な安全基準を満たしていても、個人的な経験や知識から安心できないと感じる場合もある。たとえば、過去にその食品を食べてお腹を下したり気分が悪くなったりした経験があれば、大丈夫だと説明されても食べる気になれないだろう。
食の安心・安全に必要なのは、科学的根拠と消費者の信頼獲得の両方だ。飲食店などの事業者は、安全に加えて、法令を遵守し食品による事故や事件を起こさない、産地や原材料を明記する、メニューごとの食物アレルギー情報を提供するといった、消費者の視点に立った、安心して食事を楽しめる要素が求められる。