食品ロスを招く日付逆転と3分の1ルール
加工食品品質表示基準では、製造日から賞味期限までの期間が3カ月を超えるものは、「年月表示」が認められている。だが、多くは「年月日表示」されているのが現状である。その理由は、賞味期限で製造ロットを特定できる点や長年の商習慣からだ。これを大手メーカーが「年月表示」に切り替えていこうという動きは、何を表しているのだろうか。賞味期限の年月表示化を推進する公益財団法人流通経済研究所の石川友博さんによると、大きく2つの意義があるという。ひとつは『食品ロス』、もうひとつは製造や物流などの『コストの削減』だ。
「小売業への納品は長年の商習慣により、賞味期限が前に納入した商品と同じか、それより新しい日付の商品でないと認められません。1日でも古いと日付の逆転が発生し、『先入れ先出し』の原則を守ることができなくなるからです。そのため、メーカーや卸の在庫管理は、1日単位まで管理した非常に細かいロットになってしまいます。
また、食品流通業界には『3分の1ルール』と呼ばれる商習慣もあります。食品の製造日から賞味期限までを3分割して、納品期限は製造日から3分の1までとするものです。ルールといっても業界で決まりがあるわけではありませんが、多くの小売がこのルールに準じています。賞味期限までまだ3分の2残っているのに、小売に納品することができないため、食品ロスを発生させるひとつの要因とされています」
日本の食品ロスは農水省の発表では年間約621万トン。中でも事業系による、規格外や売れ残り、返品といったまだ食べられる食品の廃棄量は約339万トンにのぼり、メーカーや小売から出されたものがその6割を占めている。
商習慣を見直すことで、食品ロスを削減する。そのためにメーカーは年月表示への切り替えを進め、小売業は納品期限を2分の1に緩和する、これが現在の食品流通業界の流れとなっている。
年月表示化は製・配・販各社にメリットあり。では課題は?
物流コストの面からみてみると、賞味期限の日付ごとに分けていた保管スペース(パレット)が削減でき、ピッキングの効率化にもつながる。これにより物流コストを削減できるのではないかと期待されている。